[遠藤功治]【目の上のタンコブ、VWとの係争】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 3~
Japan In-depth / 2015年6月11日 21時0分
VWはスズキとの協定により、株の買い増しをすることは出来ません。共同研究などの提携関係は全く無いまま、この4,300億円がそのまま眠っている、という異常な関係となります。VWが株式売却に消極的なのは、自分たちが売れば、その後スズキが他社と提携をし、それがVWの不利益になる可能性があるからです。例えばスズキとフィアットが共同戦線を張り、インドのみならず、VWが強い欧州や中国市場、小型車市場で、強力なライバルになることを恐れての話です。いずれにせよ、裁判所の判断は、それほど遠くない将来に発表される模様です。
微妙な問題が今一つ。それは鈴木会長兼社長の後継者問題です。スズキと言えば、最後は必ずこの問題に行きつきます。鈴木会長兼社長85歳、ご本人は生涯現役で90歳でも社長を続けると言っていますが、さすがに後継者問題は近々の課題でしょう。一番の理想形は、VWが株式を売却してこの係争に終止符を打ち、次期中期経営計画などを発表、会長職専属となって、社長職は長男である俊宏副社長に譲り、新経営陣の下で計画を実践する、というものでしょうか。
他社との提携にしろ、後継者問題にしろ、いつもスズキはそれほど大きな会社ではなく、規模や技術水準、主力の小型車を中心とした収益性など、1社単独での生き残りが難しいのでは、という暗黙の了解の上に立って議論されがちです。本当にそうでしょうか、事実はやや違うように思います。スズキは既に300万台規模の会社で世界10位です。インドでは1位です。また最近スズキが出した新型車や新技術には目を見張るものが多くあります。エネチャージ、S-エネチャージに始まり、軽自動車初搭載のデュアルカメラブレーキサポート、新型アルトから採用された新開発プラットフォームと重量低減技術、ハイブリッド車並みの燃費、新型ディーゼルエンジン、AGSと呼ばれるトランスミッション、そしてハスラ―や新型ラパンで見せた新市場開拓への提案力、どれを取っても他社に比べ、決して劣るものではありません。
それでもトヨタ・マツダの提携を受け、大局的に見て、他社との相互補完的提携はBETTERなのかもしれませんが、これら新技術・新車種の相次ぐ登場を見るにつけ、次世代の経営力は、既に会社に備わっていると思うのは、私だけでしょうか。但し、昨年度末の会社最多である199万台のリコールは、戴けませんでしたが。
(このシリーズ全3回。1 と 2 も合わせてお読みください)
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