[古森義久]【オバマ政権、対中強硬路線顕著に】~対中ソフト路線政策担当者2人が退陣~
Japan In-depth / 2015年6月14日 23時0分
アメリカの中国に対する政策の変化はますます顕著となった。オバマ政権の対中姿勢がこれまでより強固になってきたのだ。ワシントンではいまその証拠の一つとしてオバマ政権中枢の中国政策担当者2人の退任の意味が熱心に語られるようになった。
オバマ政権は中国の軍事膨張に対して、「中国」という国名をはっきりと挙げて批判をするようになった。まだ事態は流動的だから、今後のさらなるジグザグがあるにしても、オバマ政権の対中姿勢はこれまで6年半の大統領在任中でもいまや最も大きな変化をみせてきたといえる。その最大の要因は南シナ海での中国の軍事がらみの野心的な領土拡張の動きである。
さてそのオバマ政権の対中政策の硬化を象徴的に示す舞台裏の出来事がいまや舞台の上でも語られるようになった。その出来事とはオバマ政権の対中政策を長い期間、支えてきた国家安全保障会議アジア上級部長のエバン・メディロス氏と国家情報会議東アジア担当官のポール・ヒア氏の退任である。2人の最近の退任は公式には理由は述べられていないが、2人共、もともと中国に融和的な態度で対話を求め続けたオバマ政権の当初の対中政策推進の中心人物とされてきた。
メディロス氏は中国研究の学者出身で、アメリカ政府の政策担当者には珍しく中国の社会科学院で長期間、研修した経歴を持つ。中国へのソフト路線の提唱者として知られ、オバマ政権の台湾へのF16戦闘機の新鋭の改良型売却を中国の反対を重視する形で猛反対したこともある。
ヒア氏はCIA(中央情報局)出身で、やはり中国が専門だが、中国の軍事拡張をアメリカにとっての脅威だとする見方には一貫して反対してきた軌跡がある。このため米軍のアジア太平洋関係者たちと意見を衝突させることも多かったという。
このメディロス、ヒア両氏がオバマ政権の対中政策形成の中枢から去った結果、後任者はいずれもこの2人よりは中国に対して厳しい認識を持つ専門家たちとなることから、ワシントンではもっぱらこの退任を「オバマ政権の対中政策のシフト」として論じる向きが多い。
この2人がいなくなったために、政権の対中政策が強固になったのか、あるいは逆にオバマ政権の対中政策が強固になったために、2人は退任したのか、即断はできないものの、「対中ソフト路線」の2人組の退場は意外と大きな効果をも発揮しそうである。
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