[嶌信彦]【「中国の夢」の大戦略絵図】~日本は断片だけをみるな~
Japan In-depth / 2015年6月22日 18時0分
習近平主席の居住、1日の日程などは極秘に包まれている。暗殺を警戒しているためで、実際に何度か企てられ失敗したという。その間に周永康元政治局常務委員、徐才厚軍事委員会副主席、薄照来元重慶書記など大物の政敵が次々と逮摘され権限を剥奪されている。党幹部、上級官僚、地方トップ、軍のトップ・幹部級、国営や民営企業のトップらで拘束、事情聴取を受けて失脚した人物は数百人に上るとされる。習近平はこうして権力基盤を着々と固めているものの、自身の命も常に狙われているのだ。
その習近平が描く「中国の夢」の具体的内容が「一帯一路」「アジアインフラ投資銀行」「東アジア共同体」「東南アジアの流通、交通路」「太平洋への海洋進出」「インド洋の制海権」「NATOに対抗する上海協力機構の拡大強化」−−などだ。日本のメディアは、尖閣や南沙・西沙問題、アジアインフラ投資銀行など日本に関係した個別問題に焦点をあてて論じている傾向が強いが、押さえておくべきは「中国の夢」を20−30年かけても実現するという中国の一体的大戦略を理解した上で対応しなければ本質を見逃すことになる。
習近平の大戦略は、徐々に弱体化しているアメリカに代わり今後数十年以内に中国が世界の覇権を握りたいということにあろう。一帯一路は、ヨーロッパ、アフリカから中国までの陸路、海路(二つのシルクロード)を蘇らせることであり、そのためにインド洋に面する国々の港湾建設を援助し、大陸にシベリア鉄道と並ぶシルクロード鉄道の建設を考えている。その資金は中国だけではまかないきれないのでアジアインフラ投資銀行を創設、世界から資金を集めその決定権を握る。
米欧のNATOに対抗するためロシア、インド、パキスタン、中央アジア諸国を交えた上海協力機構をつくり、経済圏としては東アジア共同体を2017年までにつくり、東南アジアの鉄道網建設を援助して中国、東南アジアを一体化させつつ、中東から入る原油をミャンマーに陸揚げして鉄道で運ぶ。また中国はもともと大陸の中で王朝を争ってきた陸の国であり陸軍中心の権力構造だった。しかし今後は、アジア・太平洋・インド洋などに進出するため海軍力を強化しつつあり、その基地として南沙・西沙諸島などに進出しているのだ。
いわば中国は、経済圏、制海権・制空権、流通・交通路、金融、上海協力機構を軸としたNATO対抗軸をつくること――などを一体的戦略として大きな戦略図を描いているとみることができよう。そうした中国とアメリカは今後どうつきあっていくのか。日本は日米にはさまれてどう動くのか。ロシアもまたアジア・太平洋に一枚加わろうとしているが日本は米・中との距離をどのように測りながらつきあうのか−−単純な外交・安保戦略でのぞむと日本は間にはさまれオロオロすることになりかねない。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
習近平主席がヨーロッパ3国を訪問~東欧に映るウクライナ戦争への思惑
RKB毎日放送 / 2024年5月9日 14時57分
-
セルビアにとって中国は「頼れる大国」…ブチッチ大統領「台湾は中国だとの明確な見解をもっている」
読売新聞 / 2024年5月9日 6時55分
-
中国、セルビアと連携拡大=習氏訪欧、親ロシア国に照準
時事通信 / 2024年5月8日 22時58分
-
習近平国家主席 セルビアに到着 NATO大使館誤爆に言及 アメリカをけん制
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月8日 11時32分
-
習近平氏が5日から5年ぶりに訪欧、米国の対中圧力に対抗 欧州の足並み乱す狙いも
産経ニュース / 2024年5月4日 19時48分
ランキング
-
1水原一平被告が司法取引に合意し罪を認める 専門家「ほぼ全面降伏」「取れるものだけは取って(禁錮)20年~30年は回避したイメージ」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 16時32分
-
2無所属ケネディ氏、過去に「脳の一部を寄生虫に食べられた」と主張 米紙
AFPBB News / 2024年5月9日 14時22分
-
3台湾・頼清徳次期総統「台湾有事は日本有事」に「独立を図るものだ」と中国反発
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 18時23分
-
4ハマス受諾の休戦案「拒否」 イスラエル、米に伝達
共同通信 / 2024年5月9日 9時42分
-
5尹氏、日韓関係「忍耐し前進を」 対日重視の姿勢変わらず
共同通信 / 2024年5月9日 13時38分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください