[俵かおり]【エボラやマラリアはなくても怖いもの】~エチオピアでのダニとの闘い~
Japan In-depth / 2015年6月30日 7時0分
アフリカというと、マラリア(最近ではエボラ)などの感染症や病気と関連づけて語られることが多い。けれどもここエチオピアは高地が多く(私が住む首都アディス・アババは標高2400メートル)、媒介する蚊があまりおらず、マラリアのリスクはほとんどない。が、その代わりに大変なのがダニである。私はエチオピアに暮らして3年になるが、特に最初の2年間はダニの餌食になっていた。
ダニは6月から3ケ月続く雨期明けの9月下旬に大量発生すると言われているが、1年中いつでも刺される。ダニが厄介なのは、蚊と違い、どこにいるか分からない、どこから持ち込まれるのか分からない、故に防ぐことができないところだ。ダニは通常ベッドのマットレスの中などにいるため、寝ている間に刺されることが多い。そして刺されると、それは悲惨だ。痒くて、痒くて、夜も寝られない。蚊に刺された時の痒みどころではない。
私はなぜかダニに好まれる体をしているらしく、これまで腰周りや両足20カ所ほど刺され、今でもその痕が残っている。最もこれはまだかわいいほうで、知り合いの日本人女性は腕にも、体にも、顔にも、体中刺されて「痒い、痒い」とぼりぼり掻いている人もいる。
エチオピアにはなぜダニが多いのか。これについては、我々在エチオピア外国人は熱い議論をしているが、最も納得のいく説明は、家畜が多く、人間と隔離されていない、というものだ。アディスでさえヤギや羊、ラバなどが道端を歩いている。
どういう人が刺されるのか、に関してもよく議論するが、どうやら、女性のほうが男性よりも刺されやすい。また、アジア人女性のほうが白人女性よりも刺されやすい。また、高体温と血液型が関係するらしい。が、どれも経験上の話で、確固とした科学的根拠がある訳ではない。
面白くないのは、当のエチオピア人は刺された痕を見て「かおり、どうしたの?」とまるで汚いものを見るかのような目つきで言われることだ。内心、「あなたの国のダニよ」と思うのだが、もちろんそうは言わない。「ダニに刺された」というと、「ここにダニはいない」とか、「犬でも飼っているの?」などと言われる。聞いたところによると、エチオピア人も刺されてはいるのだが、免疫があるために腫れたり、痒くなることがないため、エチオピア人はダニはいないと思っている、というのが実態らしい。
このダニ、どこにいるか分からないため、予防はできず、どうしても“対症療法”となってしまう。一度、家で刺されると、ああ、ダニがいるのだと認識する。そして「バルサン」を焚くのだ。バルサンは最高に効果がある。バルサンを焚いて、仕事に行き、帰ってくるとハエなどは上を向いて死んでいるから、相当毒性が強いのだなと思うが、仕方ない。これでぱったりとダニに刺されなくなる。とりあえずは。
3年すると免疫ができる、と言われているのだが、実際、最近は不思議と刺されることが少なくなった気がする。まだまだ油断は禁物だが、期待は膨らむ。いずれにしても、このダニ王国で生き延びるため、致死的なマラリアにおびえる生活よりは痒いダニのほうがいい、と自分に言い聞かせている。
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