[安倍宏行]【スケープゴート探しに血道を上げるメディア】~安藤忠雄氏批判は当たらない「新国立競技場問題」~
Japan In-depth / 2015年7月16日 18時50分
2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画問題が大騒ぎとなっている。総工費が当初予定を約900億円上回る2520億円に膨らんだことで連日新聞、テレビをにぎわせているこの問題。安保法制を強行採決した問題に加え、内閣支持率の低下に拍車をかけかねないとして安倍首相も見直しに乗り出すのではと言われている。
そうした中、デザイン案を決めた新国立競技場基本構想国際デザイン審査委員会の委員長、建築家安藤忠雄氏が16日記者会見を行った。ザハ・ハディド案を選んだのが審査委員会だからという理由で、まるで安藤氏に責任の一端があるかのような、おかしなムードが生まれているが、筆者は全くの的外れだろうと思う。
なぜなら、新国立競技場の建設計画は、国際デザインコンクールからスタートしているからだ。審査委員会の第一の目的は、優れたデザインを選ぶことである。その後の工事費増大の責任は負っていない。又、デザインコンクールが工事費を無視して公募したわけでもない。公募要項には、工事費概算として約1300億円を提示しており、当然応募者もそれを認識した上で応募している。
又、会見に同席した日本スポーツ振興センターの鬼沢佳弘理事によると、ザハ案も技術評価委員会で環境配慮、アクセス、屋根、工期、土地利用などの項目をチェックした上でコスト面でも実現可能だと判断したという。結局、コストが膨れ上がった原因は、オリンピック開催に間に合わせなければならない、というこのタイトな工期と、高騰している資材価格や、職人・トラック運転手・建設技術者の労務費などが積み上がった結果だろう。それはある意味不可抗力の部分もあったと思われる。
安藤氏は会見で「ゼネコンの人たちも、もうからなくても、日本の国のために、日本の誇りのために頑張ると言っていただけたら・・・」と言っていたがこれは無理筋だろう。ゼネコンは私企業なわけで、儲け度外視というわけにはいかない。
かといって、国際コンペ案を白紙に戻すことは、工期的に間に合わないし、そもそも日本の国際的信用にかかわるからまずできないだろう。ならば、工事費をどう圧縮するか知恵を絞らければならない。誰も責任を取らない現状では工事費圧縮は進まない。結局、安倍総理と2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が話し合って、どの組織が工事費圧縮を責任をもって進めるか決めるしかない。
それにしても責任の所在を云々ばかりしている報道はとんちんかんと言わざるを得ない。「設計に戻れ」などと言っているコメンテーターがいたが的外れもいいところだ。デザイン変更が出来ない中で、どう工事費を圧縮するのか、そのアイデアを出すべきだろう。スケープゴートを探すような報道に読者も視聴者もうんざりしているはずだ。
※トップ画像:出処 独立行政法人日本スポーツ振興センター
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