[安倍宏行]【形骸化しているコーポレートガバナンスを正せ】~東芝不適切会計問題~
Japan In-depth / 2015年7月26日 5時0分
「不適切会計」とはよく言ったものだ。何故これが「粉飾決算」ではないのか、釈然としない人は多いだろう。
既に第三者委員会の報告書も出たが、社長の首を差し出せばそれで事足れり、とはならないだろう。証券等取引委員会が動いているからいずれ結果が出るだろうが、市場の信認を傷つけた罪は重い。オリンパス、みずほと企業の不祥事は続いている。声高にコーポレートガバナンスの重要性が叫ばれているのに、何故次から次と事件が起きるのか。
こうした中、市場の当面の関心は、不適切な会計処理の再発防止策にはどのようなものが考えうるのか、という点につきる。
東芝は指名委員会等設置会社であり、監査委員会のメンバーは、久保誠(委員長)、島岡聖也、島内憲(社外)、斎藤聖美(社外)、谷野作太郎(社外)の5人。社外取締役3名に対して、専任の監査委員会室スタッフがサポートしていた。しかし、そもそも委員長が内部の人間である。経営トップの指示で不適切な会計処理がなされたとして、それを知りながら委員長が通した監査報告書に社外の委員が異を唱えることは難しい。つまり、監査システムが正常に機能していないことになる。
ではどうしたら正常に機能するのか。企業法務に詳しい、牛島総合法律事務所の牛島信弁護士に聞いた。まず、監査委員会のメンバーは「全員社外監査委員(社外取締役)にすべき」だと牛島氏は主張する。その理由として、牛島氏は内部の監査委員がいた場合、社外の監査委員が内部の監査委員に引きずられ易いことを挙げた。ではそれを防ぐことは出来るのか。
牛島氏は、「外部だけの監査委員会のみでは情報アクセスが限られていて必ずしも機能しない。内部監査システムの充実といっても時間がかかるのが実情だから、急ぎ、社外の監査委員の一人を常勤にする、それも会計の分かる人が良い」と提案した。それでこそ本当の“監査システム”が機能するという考えだ。そこまで踏み切ることが出来る企業トップがどれだけいるだろうか?
更に牛島氏は、「司法にもっと力を与えなくてはならない」と主張する。現行法では、社外の監査委員が不正会計を見抜けなくても、なかなか損害賠償責任という話にはならない。これでは、真剣に監査するというインセンティブが働かない。これは監査システムが正常に機能しない一つの理由となっているのではないか。社外の監査委員に実際的な力を与える一方で、監査法人などとの連携の義務を重くするような法改正等が必要だろう」と牛島氏は説いた。
企業のトップが利益を追及することは当然だ。今回の東芝ショックで企業トップが委縮することはあってはならない。コーポレートガバナンスを形骸化させず、正常に機能させるための上記の様な方策は有効だと思われる。
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