[林信吾]【英、無償の医療は当然の権利】~福祉先進国の真実 2~
Japan In-depth / 2015年7月28日 23時0分
義務教育も1年延長され、企業国営化の恩恵で失業率は大幅に減った。このように、福祉国家を実現した実績から、強気で1950年の総選挙に臨んだ(英国下院議員の任期は5年。ちなみに上院は貴族院)労働党だったが、結果は敗北。保守党に政権を奪還されてしまう。
理由のひとつは、単純小選挙区制であるため、得票率(わずかながら労働党が上回った)がそのまま議席数に反映されないことだが、なによりも、戦後の復興が軌道に乗るにつれ、「平和の配当」が不十分だと考えた中産階級が、労働党の社会主義路線にNOを突きつけたのだと言われている。
その後、英国では政権交代が繰り返され(サッチャー政権登場まで、労働党の6勝4敗)、前述の基幹産業は、民営化されたり再国営化されたり、といった事態になる。しかし、NHS( National Health Service:国民医療制度)を解体しようとした政権はなかった。
サッチャー政権の時に、危機的な状況だと言われたが、ここには別の問題があったことなどは、次回に見る。今回、重要なポイントは、英国民は無償の医療について、善政の恩恵などではなく、当然の権利だと考えている、ということである。
(この記事は、
【最後は国が本当になんとかしてくれる、のか?】~福祉先進国の真実 1~
の続きです。)
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