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[山内昌之]【イランのウィーン最終合意は「歴史的第一歩」か】~数年後、秘密核開発が露見する可能性大~

Japan In-depth / 2015年8月4日 7時0分

また彼は、パレスチナやイエメンの「人民」、シリアとイラクの「政府」、バーレーンの「抑圧された人民」、レバノンとパレスチナの「抵抗の戦士」への援助継続を確言した。サウジアラビアやイスラエルは、イランの制裁解除でその同盟者や代理人(「テロリスト」)に活動資金が渡ると危険視している。日本としては、北朝鮮との6ケ国協議(8年間開催されず)に悪影響が出ることも懸念材料である。

最後は、中間的評価である。

JCPOAによって、すぐではないにせよ米イラン間のデタントに発展する可能性も全面的には排除できない。冷戦期のようにイスラエルとサウジアラビアを同盟国として絶対視する旧思考から米国が脱出するかもしれない。オバマによるキューバ、ミャンマー、イランという「敵対国家」との関係再構築の意味は、米国のグローバル戦略の大きな修正であり、地政学上の大きな変化をもたらす。

しかし、7月14日のオバマ声明でイランの核兵器秘密開発が露見した場合は、制裁が再適用され、「軍事行動」のオプションも残ると確言している。イランとイスラエル・サウジアラビアとの対決、スンナ派アラブ諸国へのイラン革命防衛隊(ガッサム・ソレイマニ)の軍事干渉の増大とISとの対決に、米欧はどう関わるのか、離脱して「なすがままにするのか」、傍観するだけなのか、ポストJCPOAの時期には、別種類の緊張が生まれるだろう。いずれにせよ、ロシアによる武器禁輸解除提案が拒否されたのは正しい。

この中間的評価がまずバランスのとれた見方であろうが、そこで大事なのは、中東における地域協力の枠組み作りの可否である。イランは地域大国なのに、トルコにもまして、イスラエルとアラブ地域大国による中東和平プロセスから排除されてきた。確かに、ハマスやヒズブッラへの軍事援助や核開発は、イスラエルの脅威であったが、JCPOAはイスラエルにパレスチナ人との平和プロセスに焦点をあてる時間的余裕を与えている。イスラエルはイランの脅威を口実に和平実現に不熱心な現状と周辺への過剰防衛的な思考を払拭すべきだろう。

イランと米欧との通商経済関係は活発化するが、同時にもともと強かった日本とイランとの取引きも復活するだろう。JCPOAの成果と意義の強化を経済基盤から支える必要もあるかもしれない。しかし、日本の政治外交にとって、イランの「封じ込め」を完全に解除できない国際環境においても、ホルムズ海峡封鎖のような有事・重大事態がJCPOAによってひとまず回避されたのは望ましく、これからも有事を避ける外交的努力が必要となる。

イランは、最初の1~2年はIAEAの査察を受け入れる。しかし、そのうちにIAEAの査察担当者には、北朝鮮の時のような疲労感とマンネリズムが必ず現れる。イランは、その隙を衝いて、北朝鮮の経験を忠実に学びながらウランの高濃度濃縮をほぼ確実に再開するだろう。そこにはイラン国内の穏健派対急進派というほぼ永久の対立関係も必ず絡んでくる。しかし厄介なのは、イランでは革命防衛隊などの軍人や保守派だけでなく、改革派やリベラルも、核兵器を保有し大国になることに反対する者はいないことだ。数年後にイランの秘密核開発が露見する可能性が大である。万一そうなると、イランへの再制裁が及び腰ながらも発動される。日本企業によるイラン相手のビジネスには、再制裁リスクの回避と必要な退場のタイミングを常に配慮するという難しいかじ取りが迫られる。

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