[古森義久]【終わりなきハードル越えを要求し続ける中韓】~今度は「行動」と「誠意」~
Japan In-depth / 2015年8月17日 11時0分
安倍晋三首相の戦後70年談話への中国や韓国の反応がおもしろい。中韓両国の公式筋の論評では「行動」と「誠意」という二つの言葉が中核だった。「行動」とは「いくら言葉で反省や謝罪を述べても、行動でそれを示さねばならない」という意味であり、「誠意」とは「いくら言葉で反省や謝罪を述べても、誠意が感じられない」という趣旨だった。中韓両国のこうした反応は歴史認識に関して日本がなにを述べても、また次々に新たな要求が出て、日本に対するハードルが引き上げられていくことを意味している。
8月14日に発表された安倍談話は内容が多角的、複眼的だったためか、中国も韓国も当初はその評価にとまどったようだった。だがその後すぐに、いろいろ出てきた反応のコメントでは中国側ではまず「『お詫び』などのキーワードがすべて記されてはいても、誠意がない」(官営メディアの「環球時報」の論評)という「誠意不在」の批判が目立った。
この点、韓国側でも「(安倍首相は)誠意ある行動で裏づけしなければならない」(朴槿恵大統領の言明)という批判が多かった。中国側ではさらに「言葉だけでなく行動で示すことが欠かせない」(中国外交部)という「行動」を問題にする反応も目立った。
今回の首相談話で問題にされたのはあくまで言葉だった。具体的な措置という意味での行動ではなかったのだ。安倍首相が終戦70周年を機に、日本の過去や現在、未来についてなにを述べるのか、その言明の中身こそが国際的な関心の対象だったのである。
終戦70周年を機に日本がなにか特定の行動をとることはその次に起きうる出来事であり、当面はあくまで談話の内容が事態の核心だったはずだ。だが中韓側はいつのまにか「談話」から「行動」へと矛先を移しているのである。
「誠意」という基準も同様に客観的な意味は少ない。人間が言葉を発し、そこに誠意があるか否か、あるとすれば、ではその程度はどれほどなのか。こんな策定にはあまり意味がない。そもそも他者の言葉の誠意度を測るというのは、きわめて主観的な作業となる。安倍首相がいくら誠意をこめて一定の言葉を表明しても、受け取る側が「誠意がない」と断じれば、それまでとなる。その場合の誠意の有無や程度は客観的、科学的に測定する方法はない。要するに人間の言葉の誠意度を問題にするという作業は不毛なのである。
こう眺めてくると、中国も韓国も安倍首相が終戦70年談話でなにを述べても、なお「行動」とか「誠意」という言葉を持ち出して、その内容への批判をぶつけてくるのが現実だとわかる。日本が中韓両国に求められるままに、謝罪を述べても、反省を誓っても、なお中韓側は「行動」と「誠意」をキーワードとしてその不在や不足を非難してくるということなのだ。
つまりは中韓両国が日本に対し、これとこれを述べよと迫り、日本がそのとおりの言葉を述べたとしても、中韓側はなおそれでは不十分だと新たな要求を突きつけてくるのだ。要するに日本側からすれば、乗り越えることを求められたハードルを無理して越えてみても、その労は認められず、こんどは高さを引き上げての新たなハードルの乗り越えをまた要求される、ということなのだ。この点は歴史問題での中韓両国との接し方では強く銘記しておくべきだろう。
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