[植木安弘]【初の女性事務総長誕生か?】~国連事務総長選の行方 その1~
Japan In-depth / 2015年8月26日 11時0分
次期国連事務総長選を約1年後に控え、前哨戦が本格化してきている。地理的輪番制を優先させるか、それとも初の女性事務総長を誕生させるかが焦点になりつつある。
現事務総長の潘基文の任期は来年12月で終わりとなる。既に二期目に入っており、これまでの慣行では最大限二期10年の任期となっている。国連憲章に事務総長の任期が規定されている訳ではないが、これまでに二期以上務めた事務総長はなく、潘事務総長も二期以上は期待されていない。事務総長は安全保障理事会(安保理)の勧告の下に総会が任命する。安保理では5つの常任理事国が拒否権を持っているため、常任理事国の支持がないと選出されない。そのため、事務総長は必ずしも適格の人が事務総長になるとは限らないとの批判がある。
国連事務総長は当初ノルウェー、スウェーデンと北欧諸国が占めた後、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカ(二人で計15年)、アジアと回ってきている。ビルマ(現ミヤンマー)のウ・タントが選ばれた背景には前任者のダグ・ハマーショルドの事故死があり、ペルーのハヴィエル・ペレス=デクエヤル事務総長が選ばれた背景には三期目を目指したオーストリアのカート・ワルトハイムの敗北があった。ウ・タントもデクエヤルも政治的には東西、南北陣営の対立を避ける妥協の産物だった。
デクエヤル事務総長の後任を選ぶ時にはアフリカ諸国がアフリカ大陸のみから事務総長が出ていないことから地理的輪番を主張したため、地理的にはアフリカ大陸の一部と見なされたエジプトのガリ事務総長選出となった。ガリが安保理常任理事国の米国の反対で一期で任期を切られると、アフリカ諸国は二期目もアフリカ、しかもサブ・サハラ(サハラ砂漠以南)のいわゆるブラック・アフリカ出身の事務総長選出を訴え、ガーナのコフィ・アナン事務総長の誕生となった。アフリカが計15年に渡って任期を務めたため、次はアジアとの雰囲気の中で潘事務総長の選出となった。そのため、これまでの主流は次の地理的輪番はヨーロッパ、しかもこれまで事務総長を輩出していない東欧との声が高まってきていた。
しかし、最近になって、次の事務総長には女性が選ばれるべきだという声が高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙は8月23日の社説で、これまで安保理の常任理事国による裏舞台での政治取引による事務総長選出方法を改め、プロセスをより透明にし、さらに創設70周年となる国連で女性事務総長を選出することが国連にとって世界的課題に取り組む上での強力な意思表示になるとの見解を表明した。
前国連事務総長等で構成される「長老」グループも女性事務総長の選出には前向きだ。Equality NowというNGOグループなどは女性を事務総長に選ぶキャンペーンを張っており、既に前回2006年の事務総長選でラトビアの女性大統領を候補に押し上げた。しかし、支持は得られず、地理的輪番制の勝ちとなった。
(【常任理事国日本に選挙権あり】~次期国連事務総長選の行方 その2~ に続く。本シリーズ全2回)
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