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[関口威人]【一審無罪、美濃加茂市長の二審開始】~検察は自省しているのか~

Japan In-depth / 2015年8月27日 7時0分

[関口威人]【一審無罪、美濃加茂市長の二審開始】~検察は自省しているのか~

プール水浄化設備をめぐり、業者から現金30万円を受け取ったとして事前収賄などの罪に問われた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長に対する控訴審が8月25日、名古屋高裁で始まった。

一審で無罪判決を受け、一旦は疑いを晴らして公務に励む市長だが、判決を不服とする検察によって再びもやもやとした霧の中に引きずり込まれている。

初公判で検察側は、新たな証拠十数点の採用を裁判長に求めた。新証拠といっても、贈賄側業者取り調べの際の捜査メモなどで、客観的、決定的な証拠とはとても言えない。案の定、裁判長はその証拠採用の可否を「留保」した。満を持して臨んだはずの検察は、出鼻をくじかれた格好だ。



検察はさらに、業者の取り調べに当たった警察官、検察官2人の証人尋問を申請。こちらは採用されたが、市長側の弁護団から「立証との関連性が分からない。具体的な証言内容が分からなければ、弁護側の反対尋問もしようがない」とかみつかれ、事前に尋問の証言内容を検察側から弁護側に伝えることになった。

弁護団の郷原信郎弁護士は公判後の記者会見で「そもそも検察側の身内であり、いくらでも都合のいい証言をさせることができる。そんな証人を調べること自体がおかしい」と痛烈に批判した。

次回期日は、実に3カ月以上も先に設定された。期日を決める場面で、「裁判所の都合」もあるとして裁判長からまず2カ月半先の日程が示されたが、さらに検察側が証人の警察官の「警察学校の研修期間で…」などと何度も難色を示し、期日はどんどん後にずれ込んでいった。そこまで時間を費やし、無理を重ねてまでやるべき公判なのか。「市民感覚」としては首をひねらざるを得なかった。

記者会見で藤井市長は「一審で十分審議は尽くされたと思っている。市政におおむね影響はないが、私も職員も心理的にひっかかるものはある。早く終わってほしい」などと述べた。ちょうど1年前、2カ月に渡る拘束を解かれ、拘置所から出てきた直後の疲れきった顔はなかったが、完全に曇りのない表情でもない。保釈後は恫喝的な取り調べを受けたとして、取り調べの可視化など、冤罪防止に向けた対策を訴えてもいる。

一審の公判を通じて、市長と業者との密室の出来事が完全に明らかになったわけではない。業者は別件の融資詐欺事件で「藤井市長に現金を渡した」ことを認定されて先に有罪になるなど、裁判上の「ねじれ」も生じている。それらを解決すべきだという問題はもちろんあるのだろう。

だがそれ以前に、無理な見込み的捜査や警察間の連携不足、不十分な証拠集め、立証能力の低下などといった捜査機関内部の問題はないのか。「業者が捜査機関に迎合した可能性はあり得る」と一審の裁判官が指摘したほど、捜査側にとって「誘惑的」な供述が今後また出てきたらどう扱い、チェックするのだろうか。

これらを自省しないままメンツを保つだけの裁判を続けるならば、検察に向けられた不信もまた一向に晴れないだろう。

*トップ写真、文中写真:岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長©関口威人 2015年8月25日撮影

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