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[岩田太郎]【国民の保護を阻む「憲法崇拝」の日米比較】~米・TV生中継射殺事件~

Japan In-depth / 2015年8月28日 23時0分

同様の倒錯が起こっているのが、戦力の放棄を定めた日本の憲法第9条だ。東京大学大学院法学政治学研究科の井上達夫教授が指摘するように、一部の護憲派は原理主義的解釈を採るあまり、自衛隊や安保条約の存在を説明できず、論理的にも現実対応においても破綻している。一方、「専守防衛の範囲なら自衛隊は合憲」とする内閣法制局の見解自体、すでに解釈改憲であり、そうした解釈改憲を支持しながら、安倍政権の解釈改憲は許さないと主張する別の護憲一派の論理も破綻していると井上教授は言う。

さらに、改憲派は、「憲法改正などしなくても、解釈改憲でいい」という自己矛盾と欺瞞に陥っていると、同教授は嘆く。そのため、自由闊達な安全保障議論が阻まれ、戦争放棄のお花畑状態か、自衛隊の米軍下請け化という、望ましくない二者択一を国民が迫られることになる。

物事の本質である「国民の命の保護」という議論を阻んでいるのは、米憲法修正第2条では「個人の権利」という神聖な利権であり、日本国憲法第9条では「侵略しない国としてのアリバイ作りのための護憲」「米国への従属を深めることで政治家・官僚が得られる利権を守るための改憲」という神聖な既得権だ。

また、興味深いのは、日米両国で手続き的に困難の多い改憲よりも、解釈改憲が増えていることだ。米国では、女性参政権・所得税導入・禁酒などが改憲国民投票で問われた一世紀前に比べ、政治家は自分たちの息がかかった判事を裁判所に送り込むトップダウン方式や、TPPのような貿易協定で解釈改憲を行うようになっている。日本では与党が過半数を握る国会が解釈改憲の場だ。

一見矛盾する絶対化(神聖化と崇拝)と相対化(時流に乗る解釈変更)だが、同じコインの表裏であり、国民の保護を奪っていく。政治に柔軟性を確保しつつ、一貫性を保つため、「国民の命の保護のための憲法」を判断基準にすべきだ。

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