[岡部伸]【プーチン訪日、「ノーネクタイ」で信頼醸成図る案浮上】~反日勢力主導権で対日政策硬化の中~
Japan In-depth / 2015年8月30日 11時0分
ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が北方領土の択捉島を訪問したことで日露関係は暗雲がたれ込んでいる。モスクワからの報道によると、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は27日、「日本とは正常な対話を続けている」と強調したが、菅義偉官房著官、岸田文雄外相らによる中止要請をメドベージェフ首相がいとも簡単に無視して北方領土訪問を実行しただけに日本政府には対露不信が広がっている。相互不信の払拭に日露首脳による「ノーネクタイ」での首脳会談開催が検討されそうだ。
在京の日露関係筋によると、メドベージェフ首相が択捉島訪問を強行した背景に、ここに来てロシア政権内における親中反日の勢力が主導権を握り、強硬姿勢を強めていることがある。その中心人物がほかならぬメドベージェフ首相だという。
プーチン氏が2000年に大統領に就任して後継者としてメドベージェフ氏が首相として日露関係に関わり始めた最初の頃、メドベージェフ氏は親日的で日本の味方だった。日露の「和解」に意欲を持ち、2008年、大統領に当選した当初も北方領土問題の解決に意欲的だったという。
しかし、問題は麻生太郎元首相と相性がよくなかったことだった。麻生元首相は、歯舞群島、色丹島、国後島の3島返還で妥協するとのシグナルを送ったが、日本国内の反対が強かったため、「北方4島はロシアによって不法占拠されている」と原則論に戻って発言した。日本側からすれば、大戦末期に中立条約を一方的に破棄して宣戦布告して奪った北方領土は「不法占拠」であることは明白だが、ヤルタ会談で米英 からの要請を受けて対日参戦した「第2次大戦の結果、ロシア領となった」と主張するロシア側は「不法占拠」は容認できない。
このためメドベージェフ首相は「日本人は信用できない」との認識を抱くようになった。2010年11月1日には、国後島に上陸し、日露関係を険悪化させた。その後もメドベージェフ首相はロシアが主要国(G8)から追放され、国際社会から孤立する中で、中国に接近、政権内で親中派の旗頭として中露接近を演出する一方、日露関係改善を阻止の先頭に立ち、様々な画策をして来た。択捉島訪問もその文脈とみることができる。
ロシア外務省は、メドベージェフ首相の択捉島訪問に対する日本側の反発に対して、「日本が第二次世界大戦の結果に反論し続けていることを物語っている」との声明を発表。27日の会見でもザハロワ報道官は「(メドベージェフ首相の択捉訪問で)日本側は岸田外相の訪露中止の公式声明を出しておらず、それはマスメディアの解釈にすぎない。日本側はキャンセルできない」と語り、強気の姿勢を崩さなかった。
こうした状況下でウラジミール・プーチン大統領が日本を公式訪問しても安倍晋三首相の悲願である北方領土問題を解決して平和条約交渉を前進させたり、中国を念頭にした日露の戦略的提携を模索したりすることは期待できない。しかし安倍首相とプーチン大統領が合意している大統領の訪日を中止させてしまうと首脳間の対話は滞り、日露関係は完全に凍結してしまう。
ここで浮上しているのがロシアのボリス・エリツィン元大統領と橋本龍太郎元首相がシベリアのクラスノヤルスクと静岡県川奈で行ったような「ノーネクタイ」によるサミット(首脳会談)の可能性だ。官邸周辺では、安倍首相が故郷である山口県にプーチン大統領を招いて棚田など美しい日本の自然と文化を披露して首脳同士の個人的信頼関係を醸成するサミット(首脳会談)が検討されているもようだ。
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