[イ・スミン]【ソウルはなぜ平穏だったのか】~韓国が北朝鮮の挑発に動揺しなかったわけ~
Japan In-depth / 2015年9月1日 7時0分
慣れてきたものに対しては警戒しない。それは人の本能である。新たな情報が押し寄せてきても、脳のエネルギーをむやみにそれに浪費することができないからだ。したがって、その対象が人であれ、物であれ、または現象であれ、「いつものような」ことには格別な注意をするより見過ごす場合が多い。
例えば、東京を初めて訪問した外国人がホテルの部屋で寝ていながら地震の揺れを感じたとき、その人はびっくりして「怖い」と声を上げるかもしれない。しかし、東京で生まれ育った日本人なら同じ揺れを感じても「今日の地震はあまり強くないね」と言う可能性が高い。それは(自分の身の回りの環境が)通常と大きく違っていなければ、大騒ぎしないという人間の心理を反映しているのである。
朝鮮半島、その中でも韓国の人々にとって、北朝鮮の挑発は東京都民の地震と似たような存在として扱われている。もちろん、ある人の意図を反映した北朝鮮の挑発と天変地異は根本的に違うものだが、多くの人たちの生活に甚大な影響を及ぼしかねないという点と、いつどこで発生するかも知れないという点、そしてたまに人命被害が発生するという点で同一だ。何よりこれは特定の環境に慣れた人たちにとって、日常を放棄するほどのパワーを持っていない点もそっくりだ。
今月の4日から25日まで続いた北朝鮮の挑発や韓国の対応は、ソウルを含め韓国に住む人々に特異なことではない一日と認識された。もちろん数年ぶりに北朝鮮が韓国地域に砲を発射して韓国軍が準戦時体制(珍島犬ひとつ)を稼動するなど、2010年代以降発生した衝突の中でかなり大きかったのは事実だ。しかし、朝鮮半島の外では「本当に戦争が起こるのではないか」という声が出たにもかかわらず、ソウル市民をはじめ多数の韓国人は普段と変わりなく生活した。
週末(8月21日~22日)にも百貨店やアミューズメント・パークは夏休みを楽しもうとする子供たちと親がいつもと一緒に日常を送り、テヘラン路と江南(カンナム)大路など市内の中心地は車でいっぱいだった。お水やラーメン、即席食品などが、戦争に備え売り切れになることもまったくなかった。
むしろ休暇シーズンが終わる時点であるため、大手スーパーの関連売り上げは下がっていた。これは1994年、北朝鮮のパク・ヨンス祖国平和委員会座長が「ソウルを火の海にする」とコメントした後、市民たちが深刻に動揺し、水とラーメンが完売した過去とはずいぶん違う。騒いだのは外国人投資家たちの関与が強い株式市場だけ、という分析も出るほどだ。
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