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[文谷数重]【太平洋で日本海軍力に対抗できぬ中国】~哨戒機が登場しなかった軍事パレード~

Japan In-depth / 2015年9月5日 7時0分

哨戒機は、パレードに出せるまでの数がない。本格哨戒機と目されるY-8Q(高進6号)は現状では2機と言われている。そこから「予備機を揃えられないので出すに出せない」あるいは「パレードに出すと長期拘束され、開発が大幅遅延する」といった理由が考えられる。

艦載ヘリも、哨戒ヘリコプターは単純に数が足りないので出せない。フランス系の機体に独自装備を施した国産Z-9Cは11機、ロシアから購入したKa-28は6機しかない。南シナ海等での実働艦隊への搭載所要が優先し、余裕が無いと見ることもできる

また、党や軍中央がその価値を理解できないといった可能性もある。「外見上で地味であり、攻撃力としても強力ではない」ために出さないといったものだ。人民解放軍はArmyと言われるようにまず陸軍があり、そこに海軍部が所属している。また人事もそのようになっており、海軍が重要だと主張しても参加枠がもらえなかったかもしれない。

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■ 揃えられなければ、日米に対抗できない

あるいは、両方とも正解かもしれない。実際にどちらも数を揃えられないことは、党や軍中央の理解が得られないためであるとも判断できるためだ。

海軍力として派手な空母は戦力整備として理解されやすい。しかも日華事変や国共内戦、台湾危機で民国、新中国を圧倒された経験がある。だから新中国も空母を持たなければならないといった意見は賛同を得やすい。

だが、実用上必須の哨戒機や哨戒ヘリは高額である上、強力に見えないため理解は得にくい。おそらくY-8QはJ-15の二倍程度の価格であり、哨戒ヘリもJ-15と同価格はするだろう。しかし、外見は輸送機と通常のヘリであり、低速でしか飛べず、これといった攻撃武器も持たない。

しかし、それがなければ中国は日米に対抗できない。外洋での海軍作戦にはそれがなければどうしようもないためだ。空母や長距離爆撃機、対艦弾道弾を持っていても、哨戒機で相手の艦隊の位置がわからなければ無意味であるし、艦載ヘリで艦隊付近の対潜警戒をしなければ不安でなにもできないためだ。

実際に海軍国であり、太平洋を主戦場と考える日米はこれらを大量配備している。日本は哨戒機を80機運用し、哨戒ヘリを85機保有している。米国は哨戒機130機を運用し、別に大量の保管機も持っている。哨戒ヘリについても現状で210機を運用しており、1世代前の機体も多数保管している。

今回の軍事パレードで哨戒機・哨戒ヘリが「出てこなかった」ことは、中国海軍はこれら問題を早期解決できないことを示唆するものでもあるということだ。つまり、外洋海軍力を拡大する上で乗り越えるハードルは相当に高く、海軍は乗り越えるための協力も得られにくいのではないかと推測できるのである。

中国は艦艇数で日米に追いつこうとし、特に日本には優位に立ちつつある。だが、哨戒戦力が足りない点は絶望的な質的劣位である。このため、今後しばらくも太平洋では日本海軍力に対抗はできないのである。

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