[Ulala]【仏、シリア難民受け入れに急転回】~溺死した3歳男児の写真の衝撃~
Japan In-depth / 2015年9月6日 11時0分
9月2日、フランスにおけるシリアからの難民に対する風向きが一変した。トルコの観光地ボドルム近郊の砂浜で溺死したシリアの3歳男児の写真がフランス中に衝撃を走らせたのだ。
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その日、フランスのバルス首相も「欧州全域で緊急な対応が必要だ」とツイッターに投稿。そして翌日の3日には、フランスのオランド大統領が「難民受け入れを割り当てる恒久的で義務的なメカニズム」についてドイツのメルケル首相と合意し、連名文書で欧州連合(EU)に提案したことを明らかにした。
ほんの数日前までフランスは難民を受け入れることに難色を示していたことを考えれば、この変化は驚くべきものだ。難民受け入れを渋る理由としては、現在抱える移民問題も大きな問題の一つでもあるが、どちらかと言えばフランスの普通の庶民の生活もそれほど豊かではなく、難民を受け入れるほどの余裕がないことが一番の要因であると思われる。
現在でもパリやフランス各地で農民により大きなストも行われている。フランス国内の野菜、果物、牛乳や豚肉の価格は、いずれも外国産の方が安くてフランス産が売れない。スーパーなどで売っている外国産におされてフランス農民は生活できないのだ。
農業だけはない。多くの工場の閉鎖や企業の倒産に伴いこの何年かどんどん失業率があがり、ついには過去最高まで上昇した。25歳以下の若者の失業率は今でも23.5%を記録している。不況の影響で街中の商店街も次々と店が閉じ、残っている店も苦しい経営が続いているような状態だ。それなのに難民まで受け入れられるはずがない。それが大多数のフランス人の本音だろう。フランスのテレビ局TF1によると56%の国民は難民受け入れに反対していており、特に収入が少ない層からの反対票が多かったと言う。
しかし一枚の写真がその全てを一転させた。9月2日と言えばフランスではほとんどの学校が始まる日。フランス人の大半は夏の平和なバカンスが終わり、新年度に向けて子供達へ文房具や新しい服などを買い揃え、ようやく学校に送り届けた安堵感が広がっている日でもあった。そんな中あの写真を目の当たりにしたのだ。新学期の用意どころかもう学校生活を送ることすらできない子供達が存在し、しかも相手は自分たちに助けを求めているという事実。
「月曜日になったらみんな写真のことは忘れるわよ」と言ったTF1のコメンテーターの言葉とは反対に、アイラン君の写真は迅速な決断の必要性を浮き彫りにし、多くのフランス人の心を動かし続けた。難民支援を行うフランスのアソシエーションCALMの呼びかけで、この日だけでも空いた部屋を提供する申し出が500件以上集まったそうだ。またオート=ガロンヌ県のいくつかの市長からも受け入れの用意があるなど次々と提案がでてきている。そして、最後まで反対していたイギリスでもとうとう受け入れ数を増やすこととなった。結果、ヨーロッパ全体が難民にたいして前向きに動きだすことになったのだ。
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しかしながら、これだけの難民の数をヨーロッパだけで解決できるわけでもない。すでに、日本にも支援や難民受け入れの要請がきているという話もある。アイラン君の家族が移民申請をして拒否をしたカナダでも大きな動揺が起こっている。
シリアからの難民問題はヨーロッパだけの問題ではない。世界全体の問題でもあるのだ。たった一枚の写真ではあるが、私達にほんとうに多くのことを気付かせてくれる一枚となったのだ。
トップ画像:背景素材 Freepikによるベクターデザイン
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