[山田厚俊]【自民党、凋落か再生か】~総裁選無投票の後にくるもの~
Japan In-depth / 2015年9月10日 18時0分
野田聖子前総務会長が推薦人20人を集められなかったことにより幻に終わった自民党総裁選は、かねてからウワサされていたとおり安倍晋三首相の無投票再選が決まった。
何しろ党内全7派閥が全て安倍首相支持を表明していた。そのなかで、果敢に挑んでいった野田氏。結果は残念なものになったが、その勇気に世論的には称賛の声が集まっている。
今回の騒動で、いくつかの疑問が改めて浮かび上がった。まず、なぜ全派閥が安倍首相を支持し、党史初の無投票再選に走ってしまったのか。野田氏が「総裁選実現のため」と語っていたとおり、自民党の強さ、しなやかさは総裁選を経て醸成されてきたといっていい。しかし、今回は各派閥は自らそれを放棄した。自民党の凋落を示したもので、野田氏はそこに危機感を感じ、ドン・キホーテを覚悟で勝負を挑んだ感がある。
放棄した理由について、ある自民党OBは「大儀より姑息な計算だ」と吐き捨てるように語る。
「今の党内力学で、安倍首相に勝つのは難しい。仮に勝って総理総裁になったとしても、極めて難しい局面での首相で短命に終わる可能性も高い。そんなリスクを背負い込むより、次期首相を狙って力を温存しておいた方が得策との考えが広がったのだ」
そんな安倍首相は、かねてから体調不良説が取り沙汰されてきた。ある関係者からは「無投票再選が至上命題でした。もし、総裁選実施となれば、最悪の事態さえも想定しなければいけないところでした」との声もあった。
だからこそ、官邸サイドの野田陣営切り崩しは壮絶を極めたのだという。安保関連法案をどう乗り切るのかといった国会運営の課題とともに、総裁選の対応に追われれば間違いなく激務と心労が安倍首相を襲うからだ。
しかし、自民党の劣化が止まったわけではない。このままブレーキが利かないまま凋落の道まっしぐらに進むのか、それとも野田氏が一石を投じたものが受け止められ、自民党再生の道が切り拓かれるのか。野田氏の処遇も含めて、今後の人事が見ものである。
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