[細川珠生]【ヨーロッパ難民問題、他人事ではない】~評論家宮崎正弘氏に聞く~
Japan In-depth / 2015年9月14日 11時0分
ヨーロッパにおける難民問題が深刻化している。シリアから脱出してきた難民が欧州全体で大きな問題になり、EUのユンケル委員長は、加盟国に16万人を割り当てる計画を提案する事態となっている。評論家の宮崎正弘氏を迎え、この問題について聞いた。
宮崎氏は、まずこの問題にある二つの背景を説明した。一つ目は、いわゆる“アラブの春”による難民。チュニジア、リビア、エジプトでドミノ式に政変がおこり、多くの難民が発生した。彼らに対し、悪徳業者が金をとって、イタリアやポルトガルへの密航を斡旋した。「そのようなビジネスが流行っていた。」と宮崎氏は語る。
二つ目はシリアからの難民。陸路からは国境通過が難しいのでエーゲ海の島々へ渡り、多くの人たちはドイツを目指す。ドイツを目指す理由について、宮崎氏は「ドイツでは難民認定されれば、月に5~6万円がもらえて住居が保証され、政府持ちで職業訓練ができる。」と説明した。
俄かに難民問題が深刻化した理由について細川氏が質問すると、その鍵はトルコにある、と宮崎氏は述べた。トルコは190万人もの難民を抱え、財政負担で困り果てていた。そのトルコが最近になって、これまで攻撃を控えていたISIS(イスラム国)に対する空爆に参加し始め、さらに空軍基地をアメリカに貸す方針転換があった。
これについて宮崎氏は、「何を取引材料にしたかは色々な憶測が出ているが、難民が海外へ出ていく蛇口を開けてしまった。ISISの掃討のためにトルコのさらなる協力を得たいアメリカなどと、難民問題がお荷物になっていたトルコとの何らかの取引によって、一挙にトルコ国外に難民が脱出するようになったのではないか」と、欧州へ難民が殺到している複雑な背景を解説した。
アサド政権は評判が悪く、シリアは世界中から孤立しているにも関わらず、何故状況が変わらないのか。宮崎氏は「裏にモスクワがいる。」と述べ、ロシアが武器提供など様々な形で政権を助けていることから、「ロシアが仲介しない限り、シリア問題は解決しない。」と、この問題の解決にはアメリカとロシアの力が必要であることを示唆した。
シリアを占拠するテロリストたちへの対応について、宮崎氏は「一般住民を巻き込むからうっかり空爆はできない。地上部隊を送り込むしかない。」と話した。現在、アメリカ軍が現地の軍を教育しているが、教育成果は上がっていないという。「オバマ政権は、とにかく優柔不断。決断できないうちにずるずると時が経過している」と宮崎氏は述べた。
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