【東電福島第一原発、“水との戦い”にメド】~汚染水対策本格化で廃炉への道筋見えてきた~
Japan In-depth / 2015年9月16日 20時0分
そして第3の柱が「汚染水の漏えい防止」だ。建屋海側の護岸と港湾内に遮水壁を設置し、汚染水が海に漏れないよう工事が進んでいた。10月末には工事完了の予定だという。
事故から4年半、ようやく汚染水対策にメドがついたことで、廃炉に向けてのロードマップが動き出すことになる。既に4号機の使用済燃料の取り出しは2014年12月に終了しているが、1号機、2号機、3号機はこれからだ。まず建屋内のガレキ撤去の必要があり、燃料取り出しは、2017年に3号機、2020年に2号機、1号機の順で予定されており、2022年から23年くらいまでかかる見込みだ。まだまだ廃炉への道のりは長い。
燃料取り出しの先には、「核燃料デブリ(燃料と被覆管などが溶融し再び固まったもの)」の取り出しが待っている。その工法はまさに人類初の挑戦だ。災害で完全に破壊された原発の廃炉はこれまで例がないのだ。これにも20年から30年はかかるとみられており、最終的に廃炉が完了するのは、2040年から50年となりそうだ。
その「核燃料デブリ」の除去に向け、最先端の技術開発の拠点が現在建設中であることはあまり知られていない。それが「楢葉遠隔技術開発センター」である。運営は独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する。センターには、なんと実寸大の格納容器下部のモックアップを作り、高線量下で作業を行うロボットの開発などを行うという。こうした先端技術は今後日本にとって大きな強みとなるだろう。中国は無論、新興国、産油国でも原発の新設は進む。万が一、それらの原発で事故が起きた時、今後日本で開発される技術が他国の為に役立つことになる。それは、事故を起こした国としての責任でもある。
一方、福島第一原子力発電所では常時7000人の作業員が働いている。事故直後に比べ、発電所内の放射線量は大幅に低くなり、フルフェイスの防護マスクではなく、顔を半分だけ覆う半面マスクで作業できる場所も増えている。私も1時間ちょっと構内を取材して回ったが、被ばく量は0.03mSv(ミリシーベルト)、歯医者で撮る歯のレントゲン3回分程度であった。また大型休憩所や食堂などが整備され、労働環境はかなり改善された印象だ。とはいえ、未だに防護服に身を包み、放射線計を身に着けて被ばく量を測りながらの作業は決して楽ではない。廃炉に向け、こうした作業が今後何十年も続くという現実を私たちは忘れてはならない。
いわきから福島第一原子力発電所まで往復する中、帰還困難区域や居住制限区域などを通り、荒れ果てた田んぼを見た。雑草や木に覆われ、茂みのようになってしまったその風景は、事故の悲惨さと住民の方々の無念さを思い起こさせるに余りあるものだった。テレビや新聞の福島第一原発に関する報道は減っているのは残念だ。ウェブメディアとして、これからも継続して報道していく必要性を強く感ぜざるを得ない取材となった。次は、これも大手メディアが詳しく報じない、原発の安全対策について取材を進める。
*トップ写真:【外観】1~4号機の原子炉建屋。右側一番手前の黒い建屋が4号機。2014年12月19日撮影 /(提供)東京電力
*文中写真:【タンクエリア】 大型休憩所にある展望窓からの眺め(海側)。タンクエリアの奥に見えるのが1~4号機。2015年6月19日撮影/(提供)東京電力
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