[相川俊英]【三重県松阪市長選、山中前市長後継敗北】~「オール松阪」復活なるか~
Japan In-depth / 2015年10月6日 7時0分
三重県松阪市で4日、山中光茂前市長の辞任にともなう市長選が行われ、元自民党県議の竹上真人さんが2万5935票を獲得して当選した。市長選直前に市を退職し、山中市政の継承を掲げて出馬した梅本陽子さんは1506票差で及ばず、また、元民主党国会議員の森本哲生さんも涙を飲んだ。
松阪市では各党相乗りの候補が無投票や無風選挙で市長になるのが、常態化していた。有力者が水面下で候補を一本化してしまうこのやり方は「オール松阪方式」と呼ばれ、市議会もオール与党(共産党除き)体制となっていた。首長と議会の二元が仲良く一体化し、市民は蚊帳の外に置かれ続けていた。市民にとって行政や議会は遥か遠い存在でしかなかった。
こうした歪な構造を壊したのが、2009年に組織団体の支援なしで当選した山中前市長だった。市民一人ひとりの支持を集めて市長に就任したが、市議会で議案の否決が繰り返されることになった。
一方、かつてのオール松阪の復活を託されて前回2013年の市長選に担ぎ出されたのが、竹上さんだった。その擁立に尽力したのが、元民主党国会議員の森本さんだ。三つ巴となった今回の市長選の候補者のひとりである。竹上さんは3万2727票を集めたものの7923票もの大差をつけられてあえなく敗北。「オール松阪」の復活はならなかった。
市民や地域の中に飛び込んで対話を重ねる山中市政が続き、市民と行政の距離はこれまでにないほど近づいた。だが、山中前市長と議会の対立は抜き差しならぬほどになり、とうとう「古い体質が残る今の議会では執行部責任をはたせない」と、辞任を表明することになった。これに仰天した市民が議会リコ―ルの署名集めに乗り出した。なぜ市長が辞めなければならないのか、市民の多くが納得いかなかったからだ。しかし、有効署名数は法定数(4万5042人分)に4281人分足らず、議会リコールは失敗に終わった。
こうして今回の市長選となったのである。争点は明確だった。山中市政の継承か否かである。かつての「オール松阪」陣営は二つにわれ、山中改革の継承を掲げる後継候補との三つ巴の闘いとなった。結果は前回の敗北から間もない竹上さんが知名度と組織力などにより、接戦を制することになった。投票率は前回より約2ポイント下がって52.65%だった。二元の抜き差しならぬ対立が続いていた松阪市は選挙後、かつての「オール松阪」に戻るのだろうか。
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