インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック~日・中・ASEANのこれから その1~
Japan In-depth / 2015年10月12日 1時0分
当時から市民が熱望していたインドネシア初のMRT(地下鉄)工事はいまようやく進んでいる。幸いこちらは日本が手掛けており、日の丸のロゴがあちこちに貼られ、日本をアピールしている。
工事のため反って渋滞が悪化した道路もあるらしいが、完成の暁にはジャカルタ首都圏の便利な足として人々に日々、利用されるのは間違いないし、日本のインフラの「安全・安心システム」が浸透すれば、市民の日本への信頼感もさらに増すことだろう。
また進出している外国企業にだって有難いはずだ。かねてより交通渋滞や港湾施設などインフラ不備のために失われるGDP(国内総生産)は相当大きいと指摘されてきた。もしかしたら走行距離140㌔の高速鉄道で得られるGDPより大きいかもしれない。
もう一つ、私が中速鉄道という選択に軍配を上げたいと思ったのは、バンドンがジャワ島西部、標高715㍍に位置する緑豊かな歴史ある高原の町だからである。19世紀初めに宗主国オランダが開拓し、夏でも涼しいこの町に、母国に帰らず余生を送ったオランダ人も多い。またそのオランダとの独立戦争でインドネシア側は町に敢えて火を放ち、退却しながら次の戦いに備えた。「バンドン火の海事件」としてインドネシア人なら誰もが知る歴史的事件だ。美しい町を一時的に失っても祖国解放に賭けたのである。
初代大統領スカルノはインドネシア人として初めて著名なバンドン工科大学に学び、独立運動と恋の青春時代を送った。そのスカルノが1955年、ネルー印首相ら新興国のリーダーを集めて開いたアジア・アフリカ会議は通称バンドン会議として世界に知られ、今年の60周年記念首脳会議(ジャカルタ)には安倍晋三首相も出席した。
現在、バンドンへの鉄道ルートは幾つかあるが、どれも老朽化したり高低差で速度制限があったりと再工事が必要なのは確かなようだ。私が期待するのはリニューアルされた快適な鉄道で緑美しい自然の風景を楽しむ高原列車の旅だ。30分ではもったいないから、1時間~1時間半くらいが良い。
つまり、こんな風にいろいろ考えると中速鉄道こそ地に足が着いた賢明な判断と思ったのである。だが覆水盆に返らず。大統領の翻意で反古になってしまい、拍手の手も引っ込めた。
(【インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック】~日・中・ASEANのこれから その2~
に続く。本シリーズ全3回)
-
-
- 1
- 2
-
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本の海外支援、「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタ地下鉄が日本式を広める「先生」に
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 7時30分
-
中国の鉄道車両メーカー、スパイ懸念や納入遅れで破談相次ぐ 日本に競り勝ったインドネシア高速鉄道は〝金食い虫〟に『鉄道なにコレ!?』【第64回】
47NEWS / 2024年6月27日 10時0分
-
ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 7時30分
-
インドネシア大統領、新首都で来月から執務 事業巡る懸念は否定
ロイター / 2024年6月6日 12時12分
-
インドネシア首都移転、担当トップが辞任 計画に懐疑的な見方広がる
ロイター / 2024年6月4日 10時13分
ランキング
-
1金正恩総書記の肖像が描かれたバッジ、党幹部らが着用…偶像化を進める狙いか
読売新聞 / 2024年6月30日 17時8分
-
2英与党、総選挙敗北必至…経済振興・移民対策に失望感「ブレグジット果たしても良くなっていない」
読売新聞 / 2024年7月1日 7時46分
-
3極右が最多得票、過半数迫る=与党大敗へ―仏総選挙・第1回投票
時事通信 / 2024年7月1日 8時43分
-
4SNSの反日的投稿、中国IT大手が規制 日本人切りつけ事件めぐり
日テレNEWS NNN / 2024年7月1日 11時53分
-
5中国、「反分裂法」違反などで台湾人15人拘束 最高刑は死刑の指針で台湾警戒
産経ニュース / 2024年7月1日 13時14分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)