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インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック~日・中・ASEANのこれから その2~

Japan In-depth / 2015年10月12日 7時0分

インドネシアは当事者だから当然知っているはずだ。金利を見落とすなんてことがあるだろうか。それとも見たくないものは見ない?マサカ。先の話だから何とかなると考えているのだろうか。ちょっとコワイ話である。「頓挫していずれ日本を頼って来ますよ」と予言する知人によれば、かつてフィリピンの発電所建設で似たような事が起きたという。

ただし私は両国の合意に高利の借款が含まれていても少しも驚かない。それどころかむしろありそうな話に思える。中国は一般に言われるほど大盤振る舞いではない。冷戦時代のソ連の対外援助に比べたら、ずっとシブイ。

1990年代初め、ソ連崩壊で最大の援助国を失ったキューバで流行った秀逸なアネクドートがある。「アロー(もしもし)」とカストロ首相が中国に電話をした。中国側は答えた。「ご飯はありませんよ。自転車の代金だってまだなのに」

スペイン語のご飯はアロス(お米、の意)。アローと言ってもアロスに聞こえてしまうほどの食糧事情の悪化と、ガソリン不足で車に替えて輸入した自転車の代金を迫る商売人の中国を皮肉ったものだ。この頃、訪れたハバナのハイウェーに車の姿はほとんど見られず、青空の下、自転車がスイスイ走っていた。

また中国はたとえインドネシアから借款が戻らなくても、「損して得する」作戦かもしれない。ジャカルターバンドン間は140㌔と短いが、インドネシアは米国大陸がスッポリ入るほど東西に長い。東端には第2の都市スラバヤがある。インドネシア最大の港を有する商工業都市で、ここまで高速鉄道を通すなら大いに意味がある。経済成長次第だが、いずれそうなるだろう。

鉄道は区間ごとに中国、日本、フランスと異なる方式を勝手に敷くことは出来ないという。中国としてはバンドンまでをまず確保し、将来は全工程を取る。そう考えれば、中国はなかなか長期的戦略に長けている。

新幹線技術を取り(盗り?)入れ、高速鉄道は後発の中国だが、中国が鉄道敷設に国家的威信をかけているように私には思える。だからこそ日本には負けられない。日中国土面積の違いから当然のこととは言え、世界の高速鉄道の運行距離2万㌔の半分は中国と言われ、対する日本はせいぜい数千㌔に過ぎない。鉄道建設に限れば中国の方が経験豊富なのだ。もちろんここで質は問わない。

鉄道に限らず世界にインフラ輸出する中国の欠点は質の劣ることだと言われてきた。台湾との「一つの中国」承認合戦を激しく展開してきた太平洋島嶼国でも、中国は道路から橋、体育館、病院、国会に至るまで、ありとあらゆるインフラを現物供与したが、島嶼国に共通する不満は、第1に品質の問題、第2に故障・修理に時間がかかる、第3に資材や機材から労働者まで連れて来て、建設が終わっても帰らない(不法残留)ことなどだという。

まさか人口大国インドネシアに中国人労働者を連れてくることはあるまいが、ビジネスを牛耳る華人に好感情を持っていないインドネシア人は多い。アフリカや太平洋島嶼国でのように我が物顔で振る舞えば必ずや顰蹙を買うだろう。

(【インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック】~日・中・ASEANのこれから その3~に続く。本シリーズ全3回。【インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック】~日・中・ASEANのこれから その1~もお読みください)


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