[宮家邦彦]【ユネスコ脱退or拠出金支払い停止】~南京大虐殺資料の世界記憶遺産登録~
Japan In-depth / 2015年10月13日 7時0分
先週9日、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が中国の南京大虐殺関連資料の世界記憶遺産登録を発表した。日本の外務省は翌日、「中立・公平であるべき国際機関として問題であり」、「ユネスコの場を政治的に利用している」と批判した。
日本外務省HPによれば、1984年12月の英国と米国が相次いでユネスコの「政治化」を理由に同機関を一時脱退したことがある。いずれも「政治化傾向の是正、事業計画の改善、予算の抑制等の面で改革が必要」などを理由とした脱退だ。
以上の通り、ユネスコの「政治化」自体は目新しいことではない。日本の対抗策としては、脱退はともかく、例えば拠出金支払い停止も考えられるだろう。但し、外交の柱の一つが国連中心主義である日本が英米のような強硬手段をとるだろうか。
〇欧州・ロシア
12日に欧州議会代表団が、17日にはドイツ外相がそれぞれイランを訪問する。米連邦議会でイラン核関連合意が否決される可能性が遠のいたので、欧州諸国はイランとの関係改善に躍起のようだ。
彼らが敢えて黙殺するのは、イランとロシアの対シリア軍事介入が欧米諸国にとって看過できないレベルに達しつつあることだ。イランとの関係改善は結構だが、こうした中東でのイランの影響力拡大にどう対処するのか。今の欧州にその答えはない。
15日にドイツ議会が難民問題で法律改正の審議を行う。メルケル首相は「政治難民の受け入れに上限はない」と述べ支持率を下げているそうだが、本当に大丈夫なのか。アジア関係では、13日から中国外相がチェコ、ポーランド、ブルガリアを訪問する。
〇東アジア・大洋州
イランといえば、岸田外相が12日にテヘランを訪問する。13-14日には中国の外交担当国務委員が訪日し、谷内国家安全保障局長、安倍首相とそれぞれ会談する。ユネスコの問題はあっても、日中ハイレベルの会談は続くということなのか。
〇中東・アフリカ
11日にイラク軍が「IS(イスラム国)」のバグダーディ指導者の乗った車列などへの空爆作戦を行ったと発表したが、同容疑者の生死は未確認だという。公開されたビデオは米国製と思われるので、今回もイラク軍の単独作戦ではないだろう。
仮にバグダーディが殺害されたとしても、「IS」の戦闘能力は当面変わらないだろうし、同組織が急速に弱体化する可能性も低い。そもそも、バグダーディは「IS」の象徴に過ぎない。「IS」がこの男一人で成り立っている訳では決してないのだ。
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