[古森義久]【経済制裁に音を上げる金正恩政権】~TBSの北朝鮮報告とは真逆~
Japan In-depth / 2015年10月17日 19時0分
「北朝鮮に対する経済制裁は効果をあげ、金正恩政権は外貨不足に苦しんでいる」
「北朝鮮にとって日本の比重が高まっている」
以上は朝鮮問題の専門家、西岡力氏が明らかにした現在の北朝鮮事情だった。その内容は10月13日のこのコラムで紹介したTBSテレビの記者の北朝鮮報告とは正反対なのである。
西岡氏は拉致問題の「救う会」の会長で、韓国での研究生活も長い。北朝鮮の実態についても日本でも有数の権威として知られる。その西岡氏は最近の北朝鮮情勢について10月15日夜の東京都内での拉致解決を求める決起集会で報告したのだった。
一方、TBSテレビの記者は10日に放映された平壌からの現地報告で「経済制裁が効いている気がしない」とか「北朝鮮にとって日本の外交的な優先順位が下がっている」と断言していた。ただしその根拠の説明はなかった。
「中国や韓国との関係がよくなったため、北朝鮮から日本との関係改善を求めることはないだろう」ともいう程度だった。いずれも安倍政権の拉致問題解決のための圧力路線は効果がないだろうという示唆に沿った報告なのである。
ところが西岡氏はごく最近の複数の脱北者たちの証言を引用していた。「朝鮮労働党39号室の幹部だった3人の北朝鮮からの脱走者たちからの情報によると、経済制裁に加えて10月10日の軍事パレードの実施での支出で外貨が枯渇し、各国駐在の北朝鮮大使に100万ドルずつの外貨獲得の緊急命令が出たというのだ。
西岡氏はさらに、中国と北朝鮮との関係はいま最悪であり、中国は北朝鮮に核兵器実験やミサイル発射を差し控えることを強く求め、金正恩書記がそれに当面、応じたため、中国共産党序列第五位の高官を平壌に送ったのだという。
北朝鮮はアメリカからも支援を得られそうな気配はまったくなく、「日本からなんとか資金を獲得しようという狙いが相対的にさらに強くなってきた」というのだ。だから安倍政権と交渉することの外交的価値がこれまでより高くなってきた、というのである。
いずれもTBSの見解とは天と地、白と黒、まさに逆なのである。北朝鮮の見方も多様なのだ。少なくともTBSの偏向報道とは異なる情報もまちがいなく存在するのである。
(この記事は、「[古森義久]【TBS北朝鮮報告の「偏向」】~安倍政権の政策への批判の根拠は?~」の続き。)
(写真引用:Flickr: Pyongyang 100th Year Kim Il Sung Birthday Celebrations、Author:Joseph Ferris III)
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