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[清谷信一]【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】~国内企業のライセンス生産守る為?~

Japan In-depth / 2015年10月18日 18時0分

そして射撃弾数のカウンターが装備されている。これは射撃した弾数を記録することによって、砲身の寿命を計ることができる。M3までは兵士がメモなどに記録する必要があったが、不正確になりがちだった。このカウンターの採用で個々のカール・グスタフの寿命を正確把握できるので、兵站上の管理が大いに楽になる。つまりM3からM4では別物といっていいほどの進化を遂げている。

では何故陸自は「あえて」旧式化したM3を採用したのだろうか。確かにM4はM3よりも値段が高くなるが、何倍も高くなるわけではない。3.4キロの軽量化は隊員の肉体的な負担軽くする、あるいはより多くの、また照明弾や発煙弾、多目的弾などより多彩な弾種を携行することによって戦術的な柔軟性や火力を獲得できる。またオスプレイや水陸両方装甲車AAV7などを「気前よく」買う陸自が気にするような額ではないだろう。

それは恐らく、豊和工業にライセンス生産の仕事を振るためではないだろうか。現用のM2も昭和54(1979)年度からの導入当時は輸入で、昭和59(1984)年度から豊和工業のライセンス生産に切り替わっている。

だがM4はチタン合金や炭素繊維などが新素材が多用されており従来の加工技術ではコンポーネントが生産できない。炭素繊維部分はベンダーを探せば何とかなるが、チタン合金製の砲身の加工には新しい設備投資と技術が必要となる。恐らくかなりの設備投資が必要となるだろう。

であれば豊和工業では生産できない。生産するとしてもコストが極めて高くなり、財務省を説得できないだろう。また砲身やコンポーネントが輸入して組み立てるだけならば「ライセンス生産」ではなく単なる「アッセンブリー生産」となり、これまた単価を押し上げるだけで国産化する名目が立ちにくい。

豊和工業は他にも89式小銃、81ミリ及び120ミリ迫撃砲などを生産しているが、89式は近く生産が終わり新小銃に切り替わるだろうが、迫撃砲の調達数は減っている。これで無反動砲の生産が終わってしまえば、同社の防衛省向けの売上は大きく減少するだろう。そうであれば天下りを受け入れることも難しくなる。

岩田清文陸上幕僚長は昨年11月6日の定例会見で筆者の質問に答える形で、将来M4に調達を切り替える可能性が残っていることを示唆したが、今後この件の行方を注視しなければならない。仮に切り替えるにしても、そうなれば当面M2,M3,M4の「三世代同居」となり、訓練も兵站も三重となって不効率となる。

こういう怪しげな調達は防衛費の無駄使いだけではなく、現場の隊員に大きな負担をかけ、また士気を落とすことになる。是非とも政治やマスメディアはこのような調達の問題に興味をもち、追求してもらいたい。

トップ画像:カールグスタフM4、写真提供 サーブダイナミックス

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