【仏同時テロ:人道的立場での難民受入れとテロ防止】~シリア内戦終結が根本的解決策~
Japan In-depth / 2015年11月16日 18時0分
アイラン・クルディ君という3歳の男の子が溺死した写真によってヨーロパの難民受け入れ体制が大きく変わった。(筆者ブログ参照)
とりわけ大きな変化があったのがフランスだ。フランスは自国が抱える移民問題があり、フランス庶民の生活も決して豊かではないため、難民受け入れに消極的だった。
しかし、たった一枚の写真がフランス政府の方針を大きく変えた。フランスのバルス首相は「欧州全域で緊急な対応が必要だ」とツイッターに投稿。そして翌日の3日には、フランスのオランド大統領が「難民受け入れを割り当てる恒久的で義務的なメカニズム」についてドイツのメルケル首相と合意し、連名文書で欧州連合(EU)に提案した。
そのフランスで前代未聞の同時多発テロ事件が起きてしまった。192人もの犠牲者を出し約300人の負傷者を出すこれまでにない大規模なテロ事件にも関わらず、報道後進国の日本のテレビの特集は殆どなく、情報収集のためにCNNを見るしか方法がない状態だった。
明けて15日、ようやく日本のテレビがパリから中継をしたり、スタジオに専門家を呼んで解説をはじめた。丸一日が経過し、事件の詳細が明らかになってきて、どうしても釈然としない部分がある。
パリ近郊のスタジアムで自爆した容疑者の遺体のそばから「1990年9月にシリアで生まれた人物の名前が書かれたシリア国籍のパスポートが見つかった」らしい。
テロを起こし、成功しようが失敗しようが生き残ることを選択せず自爆の準備をするテロリストがパスポートを持ち歩くとは到底思えない。何故、現場にパスポートがあったのか。自爆した本人の物なのか。日本のメディアが疑問に思わないのが不思議でならない。
ともあれ、この事件によってヨーロッパ全体でシリア難民の受け入れが厳しくなることは間違いない。当事国のフランスは勿論、難民受け入れに寛大なドイツも今後の難民受け入れに大きな影響が出てくることは必至だ。
シャルリー・エブド襲撃事件があり、厳戒態勢の中でさえ防ぐことができなかった同時多発テロ事件。自国内でのテロを未然に防ぐには、難民を装って入ってくるテロリストの入国を拒否するしかない
そのために本当に支援が必要で、命からがら逃げてきた難民も拒否せざるを得なくなってしまう。数十万人の難民が押し寄せてくるヨーロッパにおいて、難民の素性を精緻に調べ上げてから難民登録をするのは不可能に近い。
かつてアフガニスタン難民を受け入れる時に作られたトランジットエリア、難民登録をする巨大なレジストレーションセンターが必要となってくる。そして、難民支援、テロ防止という対処療法ではなく、シリアの内戦を終結させるという根本的な解決を模索しなければ、ヨーロッパだけでなく世界の安定は望めない。
写真全て:©久保田弘信
トップ画像:砂漠を渡ってヨルダンの難民キャンプにたどり着いたこどもたち
2枚目の写真:母国への帰還叶わず隣国ヨルダンで永眠するシリアのひとたち
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