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[渡辺敦子]【仏同時テロ:提起される「団結」と「疎外」】~9.11以来最悪の「西側」攻撃~

Japan In-depth / 2015年11月17日 23時0分

では地理的には「極東」と呼ばれる日本はどうなのか。少なくとも政治的にはthe Westの一員である、と考えられる。以前、大学で行われたある勉強会で、中国人の学生に「なぜ日本はthe Westの一員になれたのか。たとえば韓国は the Westの一員とは考えられないだろう」と質問された。ありがちな回答のひとつは「日本は歴史的に価値観を共有してきた」というものだろうが、何をもって価値観とするのか。仮に資本主義、民主主義が価値観であるとしても、これらの定義は常に流動的だし、韓国との差を説明しない。また、一体誰がthe Westの「門番」か、つまり誰がメンバーシップを発行するのか、という問題もある。

問題は、「団結」の言説が常に、そこから外れた人の「疎外」を伴うことだ。マスコミなどで日常的に繰り返される、恐らく悪気のない政治的線引きの言説が、読み手に小さなわだかまりを与える可能性がある。テロならば、実際には西側以外では何度も繰り返されてきた。パリの同時テロの一日前には、ベイルートの自爆テロで40人以上が死亡、90年代のレバノン内戦終結後最大の惨事となった。1カ月前にはトルコのアンカラで100人以上が死亡した。

米シンクタンクによれば、過去のテロによる死者の97%はムスリムだという。そうした国々から見れば、the West以外で起きたテロは問題ではないのか、と思いたくもなるだろう。そしてその疎外感のつみ重ねが、テロのひとつの温床となってきたことは否めない。

事件は痛ましい。団結は大切だ。だがその表裏である「疎外」に思いをはせることを、忘れたくはない。

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