[宮家邦彦]【仏同時テロ:欧州版“テロとの闘い”の始まり】~G20、具体策示せず~
Japan In-depth / 2015年11月17日 18時0分
先週末のパリでの同時多発テロは事実上の欧州版「テロとの闘い」の始まりだった。本来なら経済問題しか扱わないG20で「テロとの闘いに関する声明」が発表された。但し、内容は最近のパリやアンカラでのテロ事件を「卑劣」と非難しただけで、あまり実効性のあるものとは言い難い。
注目すべきは、「テロリストの活動を予防し、抑制するために協働する決意を確認する」とし、「テロ資金の供与への対処、暴力的過激主義の予防、国境管理、世界的な航空安全の強化などで協働する」とした点ぐらい。だが、具体策となれば、国際的コンセンサスはないだろう。
今回仏は一体どうしたことか。テロは断固非難されるべきだが、1月7日に次いでのテロの発生を防げなかった。事件の計画性、組織性に鑑みれば、「インテリジェンスの失敗」と批判されても仕方あるまい。卑劣にも、テロとは最も脆弱な目標を狙い、最大限の恐怖と衝撃を与える暴挙だ。
ふと、自由・平等・博愛というフランス革命のスローガンを小学生時代の卒業アルバムに書いたことを思い出した。今から思えば、この「自由・平等」とは元々アンシャンレジームの第一身分であるカトリック聖職者からの自由と平等であり、その本質において「世俗主義」だったのか。
要するに、フランスで自由になるためには、フランス語を喋り、フランス文化を愛し、政教分離の原則を受け入れる必要があるらしいのだ。18世紀のフランス平民にとっては容易なことだが、こうした事実上の「同化」政策は21世紀のイスラム教徒移民には難しいハードルに違いない。
2011年、フランスでは公共の場でブルカの着用が禁止された。これを不満として提訴したパキスタン系フランス人女性は敗訴し、興味深いことに国際人権団体はこの仏裁判所の判決に反発しているという。
この点、英国はフランスとは大きく異なる。英国は異教徒移民の宗教上の諸行動を認め、それぞれ共同体として存在することを受け入れた。それでも、就職面などでの異教徒移民に対する差別はなくならない。英仏どちらの方式も失敗だ。これは日本にとっても教訓となるかもしれない。
〇欧州・ロシア
今週の欧州はテロ一色である。
〇東アジア・大洋州
18-19日にマレーシアでAPEC首脳会議がある。今週の後半は南シナ海を含むアジアの諸問題が注目を集めるはずだったが、パリでのテロ事件のおかげで国際的には霞んでしまうのだろうか。そうなれば欧州とアジアのギャップはますます拡大するかもしれない。気になるところだ。
〇中東・アフリカ
偶然ながら、16日にイラン大統領が、16-17日にカタールの首相が、それぞれフランスを訪問する。少なくともその予定だったらしいのだが、一体どうなっただろうか。
〇アメリカ両大陸
〇インド亜大陸
特記事項なし。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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