[文谷数重]【仏同時テロ:仏は空爆で利益を得られるのか?】~報復より原発テロを警戒せよ~
Japan In-depth / 2015年11月18日 7時0分
国民感情の沈静化を眺めながらの空爆規模縮小・撤退が正解だ。アメリカへの付き合いや、フランスの威信といった問題もあるのでいきなりの完全撤退は難しいが、徐々に攻撃規模を縮小し、誤爆等の事件を機会に手を引くといったあたりが現実的な方針となる。
■ 報復よりも原発テロを警戒すべき
フランスが優先すべきは、なによりも今後の国内テロ対策・治安維持である。利益のでない空爆は早仕舞して国内治安の維持に専念すべきだろう。
もちろん、フランスは警備体勢を強化している。戦争状態の宣言、令状なしの家宅捜索許可と、ほぼ戒厳状態にある。
だが、テロ勢力に目をつけられている割には防止に失敗する傾向がある。今年に入ってだけでも風刺画でのテロがあり、鉄道のテロ未遂があり、今回のパリのテロがあった。警備体制が弛緩したころに、三度目のテロを確実に防げるかどうかは分からない。
何よりも原発テロは警戒して貰わなければ困る。フランスは原発大国であり、警察権力が強いにもかかわらず、警備はあまり厳重ではない。
佐藤暁(原子力コンサルタント・元米国GE原子力事業部)氏によれば、仏原発への侵入例は2件ある。いずれも環境活動家によるものだ。2011年12月5日にはノシャン・スル・セーヌの原発で9人が格納容器上に登攀し「楽々成功」と書いた幟を建てられている。翌2012年5月3日にはピュジェの原発にパラグライダーで侵入され発煙筒を投下されている。* これらは警備上での前科である。
テロとしてメルトダウンが起こされ、放射能の封じ込めに失敗すればフランスだけではなく世界中が迷惑を蒙る。まず汚染はヨーロッパ、地中海世界全体に広がる。
更に厄介なこととして、模倣テロの流行がある。テロには伝染する性質がある。ある国でのテロの成功は情報網によって世界中に広まり、思想も目的も違う勢力に模倣される。これは最近のことではない。電信網と新聞出版が完成した19世紀以降の傾向である。
* 佐藤暁「核テロの脅威について考える」『科学』(岩波書店,2013.4)pp.0553-0561
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