[嶌信彦]【仏同時テロ:日本は対岸の火事でいられるか?】~政府のIS非難声明は言葉を選べ~
Japan In-depth / 2015年11月20日 11時0分
戦闘状況はシリア対反シリア・ISIL戦線を軸に、シリア支援の欧州軍の参戦、勢力拡大を目指す旧アルカイダ系や中国・東南アジアなどのイスラム教徒なども参入しているようで極めて複雑な状況になっているようだ。主役だったアメリカは主力軍を引き揚げ、顧問団数十人と無人の戦車、戦闘機で戦っている。シリア軍は弱体化していたがロシアの支援によって息を吹き返しているともいわれる。
ISILは戦線を広げ、19世紀の砂漠時代のように自由に国境を移動できる国際戦略を打ち出しイラク、シリア以外の国にも進出しようとしているようにみえる。いわば19~20世紀の欧米による国境画定の破壊に乗り出し、自由に往来できる往時の砂漠時代を目指しているようにみえる。しかしサウジアラビア・アラブ首長国連邦などの穏健派アラブ諸国はISILの動きに反発、アラブ諸国内でも混乱が起きている。
いわば、中東はこれまで多くのスンニ派の国々と大国イランのシーア派の対立が焦点だったが、ISILの出現でアラブのみならず世界のイスラム教徒と先進国に激震を与えてしまったといえる。
欧州は、このイスラム国、シリアの戦闘で難民が大量にEUに押し寄せ、国別に受け入れるといった考えまで浮上している。いずれにせよEUはこの難民問題で当分身動きがとれないのではないか。
アメリカは景気が一進一退で、目指すゼロ金利脱却の判断を先延ばししている。アメリカの金利引き上げは新興国の景気、株価、為替にも大きく影響するので年末までの米当局の判断は世界経済に大きな波紋をもたらすだろう。
問題は日本だ。ISILの戦闘はまだ日本人にとって他人事にしか映っていない。しかし、事件の度に出す非難の表明がいつ日本に歯向かってくる材料になるかもしれないということを覚悟しておくべきだろう。それにはイスラム教の教えやイスラムの国々の成り立ちなど深い知識をもって思いつきや感情だけで声明を出すのではなく、歴史をよく知っておくことが重要だと思う。政府も声明を出す時はよく言葉を選んで発信すべきだろう。
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