[久保田弘信]【報道自由度ランキング、過去最低の日本】~2015年、180か国中61位の深刻さ~
Japan In-depth / 2015年11月21日 11時0分
報道自由度ランキングをご存知だろうか。国境なき記者団という世界のジャーナリストたちによるNGOが毎年世界180カ国の「報道自由度」を発表している。簡単にいうと、その国の報道が政治や自主規制などに左右されず、どれだけ自由に報道ができているかのランキングだ。
我々日本人自身が日本の報道に対してどれだけの自由度があると思っているか。このページを読んでくれている読者の方々は日本の報道自由度はそれほど高くないと自覚してくれている気がしますが、多くの日本人は日本の報道、特にNHKは正しいと思い込んでいる傾向が強い。
民主党政権下で11位までランキングを上げた日本だが、その後、年々ランキングを下げ、2015年にはついに61位という過去最低ランキングをマークしてしまった。
原因は震災後の原発報道の不確かさ、外国人記者やフリーランスに取材の機会を与えない記者クラブ制度、そして秘密保護法の制定があげられる。国境なき記者団は日本の報道を「主要先進国で唯一報道に顕著な問題がある」と評した。
大きな問題は我々日本人が日本のメディアに対して、それほど正しいとは思っていなくても「顕著な問題がある」とまで認識していないことだと思う。
そんな日本を象徴するかのように、日本の報道の自由を調査する国連特別報告者の来日調査が日本政府の要請で延期された。ありていに言うと日本政府側からのドタキャンである。
前任の特別報告者フランク・ラ・ルー氏は 特定秘密保護法が国民の知る権利や報道の自由を脅かす危険性があるということで強い懸念を表明し、日本政府に対して再考まで求めていた。最近では日本政府のメディアに介入する発言などもあり、国連人権理事会としては訪日調査の必要性を重んじていた。
特別報告者のデービット・ケイ氏は12月1日より8日まで訪日調査の予定だったが、日本政府から「予算編成などのため万全の受け入れ態勢が取れず、日程を再調整する」と延期を求めたようだ。デービット・ケイ氏の訪日予定は国連のオフィシャルウエッブサイトにも掲載されていて確定事項であったはずだが。
これは大きな事件だが、大手メディア(特に電波媒体)はフランスのテロ事件の報道に忙しくて、この件を扱っていない。
現在のシリアもそうだが、言論の自由、報道の自由がなくなった国が「アラブの春」という大きなムーブメントを起こしている。物言うジャーナリストがその発表媒体を奪われ、Yesマンの御用学者やコメンテイターが影響力のある媒体を占め始めている日本。
唯一の救いは誰でもインターネットを 気軽に使える時代になり、Japan in-depthのようなネットメディアによって細々でも発信できることだ。寄稿させてもらっている僕が言うのもおかしいが、Japan in-depthには何の制約もない、記事内容に大きな間違いがあれば別だろうが、編集長の安倍氏からリライトの依頼があったことは一度もない。様々な分野の方々が寄稿していて、その思想や政治に対する考え方は千差万別だ。
こんな自由なメディアだからこそ発信できることがあると思う。先日、インドでNHKワールドを見て驚いた。福島の原発から毎日400トンもの汚染水が流れ出ていると映像付きのニュースが流されていた。すぐに日本の友人にチェックしてもらったが、日本国内向け地上波には同様のニュースは流されていない。
写真:「内戦が始まる前、平和なころのシリア」©久保田弘信
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