[古森義久]【テロ集団ISとの「対話」主張する大学総長】~独・メルケル首相は「言葉では説得できない」と明言~
Japan In-depth / 2015年11月28日 12時11分
パリでの大量無差別殺戮テロの実行を宣言したイスラム過激派テロ組織の「イスラム国(IS)」にどう対処すべきか。ドイツのメルケル首相が11月26日に語った言葉は重い。
「テロリズムにはあらゆる力で戦わねばならない。ISは言葉で説得することはできない。軍事的手段で戦わねばならないのだ」
軍事力行使については全体としてソフトな路線を歩んできた女性首相の言明である。同26日、フランスのオランド大統領と会談した後すぐの言葉だった。
一方、日本のテレビでは日本人の「識者」たちがもっぱら無差別大量殺害のテロ組織に対し奇妙なまでに寛容な発言を続けている。罪のない民間人を多数、殺した当事者たちを懲罰や封じ込めることをせずに、その言い分を聞こうというのである。「ISとの対話」がまず重要だというのだ。
この種の主張は残虐なテロ行為と、その行為への法の執行と再発防止のための軍事行動とをまったく同等の次元に並べている。ISが対話を無視して殺害行為に走る現実をも無視している。
テロとは事前に秘密裡に計画し、一定の政治や宗教の目的のために、非武装の民間人を無差別かつ大量に殺す行為である。軍事関連目標を対象に予告をしたうえで実行する空爆は軍事行動であり、テロリズムではない。
たとえば法政大学総長の田中優子氏は11月15日のTBS系のテレビ番組でISとの対話を主張した。「(ISと)本当に対話を進めるためにはどうしたらよいかというようなことが本当の(テロ)解決に繋がる」と述べたのだ。そしてISへの軍事力行使に反対を表明した。江戸時代の文化風俗を専門とする田中氏にどこまで国際テロ問題を語る資格があるのかは不明だが、同じ女性の発言でもメルケル首相の言とは天と地との相違である。
田中氏にはISとの対話を実際にどうやって実現するのか、だれが対話役となるのか、問いたいところだ。今年1月にISに惨殺されたジャーナリストの後藤健二氏もISとの対話を求めて、その支配地区へ入っていったのである。
たまたまではあるが、その後藤氏も法政大学の出身だった。その同じ大学の総長の田中氏がいま後藤氏の悲劇もまったく忘れたかのように、ISとの対話を提案するのだ。メルケル首相ははっきりと「ISは言葉で説得することはできない」と明言するのである。
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