[岩田太郎]【「経済的平等」でテロは防げる?】~ピケティ教授の説は“絵に描いた餅”~
Japan In-depth / 2015年12月3日 7時0分
このテロ原因論争は、欧州で域内統合やグローバル化を推進するピケティ氏のような知識人エリートと、そうした体制に異を唱え、欧州内各国の民衆による国民投票など直接的民主制や、グローバル化反対を唱えるルペン氏ら「庶民の代表」のせめぎ合いから生まれた。統合やグローバル化が、テロや移民排斥で後退すれば、欧州知識人エリートは権力と富を失う。官僚的テクノクラートの保身こそが、「格差論」「平等論」や移民擁護論、ひいては欧州のテロ対策の核心なのだ。
カーネギー国際平和財団のステファン・レーン研究員は、「欧州連合(EU)のエリート層は、政治的・経済的・社会的問題を技術的な論争に持ち込み、彼らだけが密室で物事を決めるスタイルをとってきた。これに対し、一般層は国民投票など直接的な政治参加を求めている。エリートたちは、そうした直接民主主義制度の弊害を説いて反対している」と解説している。
ピケティ教授は、「私の主要敵は、民族主義と国家主義だ」と述べているが、エリートが民族主義や国家主義を抑え込むグローバル化や域内統合の「平等」「包摂」「寛容」「開かれた国境」こそが、経済格差の源泉だとして反発を招き、テロリストが、「十字軍が我々を統合して、イスラムのやり方を妨げ、支配する仕組みだ」としてテロを正当化する理由になっている。
エリートに強制された経済開放そのものが人々を経済的に苦しめてきたのではないか。国境規制や各国の独立性確保が、逆に人々を救うのではないか。欧州と中東で、人々は既存の「開かれた」経済秩序を疑っている。その文脈において、ピケティ教授の「経済的平等」は絵に描いた餅であり、テロを防げない。
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