[林信吾]【英国・黒人奴隷の知られざる歴史】~ヨーロッパの移民・難民事情 その10~
Japan In-depth / 2015年12月3日 18時0分
ともあれこうした事情で、奴隷として英国本土に直接送られた黒人は、ほとんどいなかった。では、ロンドンに数多く暮らす黒人は、いつ、どこから来たのか。答えはもちろん、第二次大戦後である。
二度の世界大戦によって、大量の若年労働力を失ってしまった英国は、戦後復興のために、有色人種の移民を積極的に迎え入れる政策をとった。その皮切りが、大戦中、英軍部隊の一翼を担った英領ギニア出身の黒人兵士たちで、復員後、英国に留まりたければ許可する、との布告が出され、それに応じた人たちがいたわけだ。
ロンドンの地下鉄の駅員に黒人が多いことも、知る人ぞ知るだが、これまた労働力不足を解消するために、ロンドン・トランスポート(市交通局)が、職員の募集窓口をジャマイカに設けていた、という事情があってのことである。
このようにして、ロンドンにおける黒人は、奴隷ではなく近代的な移民労働者として、戦後復興に大きな役割を果たしたのだが、ほどなく、深刻な差別問題に直面した。
1950年代中期に、早くも英国経済が停滞したのだ。失業の危機に直面した白人青年層は、「黒い肌の移民が、自分たちの職を奪っている」と考えるようになり、暴力を伴う移民排斥運動が起きるようになった。
次回は、その話を。
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【古代人のDNA解析から新たに解明された「渡来人」の正体!】虚実入り混じる古代史を解き明かす書籍『渡来人とは何者か』、2024年11月22日発売。
PR TIMES / 2024年11月22日 10時45分
-
【逆説の日本史】日米両国に「シベリア出兵」を要請した英仏の二つの「思惑」
NEWSポストセブン / 2024年11月15日 11時15分
-
景気占う「お歳暮商戦」石破新政権への不安や楽観は個人消費にも表れるがどうなる?(中西文行)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月8日 9時26分
-
英保守党党首に44歳の黒人女性 ベーデノック氏、右傾化加速
共同通信 / 2024年11月2日 22時45分
-
アメリカ社会「分断」の根底にある"ふたつの聖書" バイデンとトランプが宣誓に使った聖書は別物
東洋経済オンライン / 2024年10月26日 18時0分
ランキング
-
1軍事費「増額続ける」=トランプ氏に配慮―前台湾総統
時事通信 / 2024年11月24日 15時29分
-
2韓国政府、佐渡で25日に独自追悼行事開催
共同通信 / 2024年11月24日 16時4分
-
3ガザ全域をイスラエル軍が攻撃、48時間で少なくとも120人死亡…レバノンでは空爆で20人死亡
読売新聞 / 2024年11月24日 18時47分
-
4飲料にメタノール混入か、ラオスで外国人観光客6人が相次ぎ死亡…日本大使館も注意呼びかけ
読売新聞 / 2024年11月24日 15時44分
-
5COP29 途上国支援「年46兆円」で合意 「目標額が少なすぎる」の声も
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 11時43分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください