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[古森義久]【北朝鮮寄りの中国を非難した韓国】~拉致問題解決の為の国際会議で~

Japan In-depth / 2015年12月13日 23時0分

[古森義久]【北朝鮮寄りの中国を非難した韓国】~拉致問題解決の為の国際会議で~

国際的な舞台で韓国代表が堂々と中国政府を批判した――
日本に対してこのところ無理難題を突きつけ、中国にばかりすり寄っているようにみえる韓国が中国を批判するというのは意外だった。だから韓国もまだまだ捨てたものではないのだと、ほっとした気分にもなった。

この出来事は12月12日、東京都内で開かれた日本人拉致問題に関する会議で起きた。正式には「日本政府主催国際シンポジウム―拉致問題解決に向けた国際連携」と題する討論会だった。日本政府が主催しての日本国内での拉致問題解決を目指す国際シンポジウムというのは、これが初めてだった。

会場のイイノホールには500人ほどの参加者が集まった。檀上には日本の拉致被害者「家族会」代表の飯塚茂雄氏を囲むように韓国、タイ、モンゴル、EU(欧州連合)、アメリカなどの政府代表が並ぶ。ほとんどが自国民を北朝鮮に拉致された国の代表ばかりだった。

冒頭で国連の「北朝鮮人権調査委員会」(COI)のマイケル・カービー元委員長と「北朝鮮人権状況特別報告者」のマルズキ・ダルスマン氏がそれぞれビデオで北朝鮮の国家的な拉致活動の非を改めて糾弾し、国連としての追及を進める方針を説明した。

国連総会第3委員会(人権問題)は11月19日、日本人拉致を含む北朝鮮の人権侵害の案件を国際刑事裁判所(ICC)に付託することを国連安全保障理事会に促す決議案を採択した。日本とEUが主導した決議案で、賛成112、反対19、棄権50で採択された。

反対した国には北朝鮮のほか中国などが入っていた。この決議案は今月中に国連総会で採択され、同安保理での審議に回される。だが安保理では拒否権を持つ中国がすでにこの決議案には反対したため、安保理ではやはり決議案は通らないとみられる。

こうした背景の中でこの東京での国際会議12日に演説した韓国政府の人権大使の李政勲氏が「関係各国は単に北朝鮮を非難するだけでなく、北朝鮮の人権侵犯をICCに付託することに反対する中国などの諸国を強く批判すべきだ」と述べたのだった。李大使は5分ほどの短い演説のなかで2度も、「国際社会は中国を批判すべきだ」と繰り返した。この声明はいまもっぱら中国への接近を図る朴槿恵政権の代表からとしてはきわめて珍しかった。

なにしろ最近の韓国の朴槿恵政権はもっぱら中国にすり寄っている。日本に対する歴史問題などでは最近の韓国は中国との共闘を組む姿勢をみせ始めた。だから中韓間の政府レベルで韓国側が中国側を正面から批判することは非常に珍しい。だが李政勲大使はその慣例を破るような形で、中国の国名をはっきりあげ、流暢な英語で「私たちは中国をも非難し、批判する」と言明したのである。

会議後、李氏に質問してみると、やはり推測どおり、彼はキャリア外交官ではなく、延世大学の教授が本職で、政府から任命されてこの人権大使のポストにあるのだと説明してくれた。いずれにしてもいまの韓国政府代表が国際的な舞台で中国を明確に非難することは異端だといえる。韓国でも大義や人道主義という普遍的な価値観の保持のために、その種の価値観を破ろうとする側への非難は明確に表明するということなのか。いずれにしても好ましい動きとして歓迎したいと痛感したのだった。

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