[山田厚俊]【与野党争奪戦、台風の目乙武氏】~来年の参院選巡り~
Japan In-depth / 2015年12月15日 7時0分
来年の参院選をめぐり、与野党ともに水面下での“候補者争奪戦”が激化している。その目玉候補のひとりが、著書『五体不満足』で知られる乙武洋匡氏(39)だ。
一部報道によれば、乙武氏自身が自民、民主、元気会から出馬の打診があったことを認めたものの、「現時点での(参院選)出馬は考えておりません」と、コメントしているが、真相はどうなっているのか。
乙武氏と親しい野党衆院議員はこう語る。
「乙武氏は以前、新宿区長選の出馬も真剣に考え、直前で断念したり、都知事選への意欲もあった。しかし、国政への気持ちはかねてからあったようで、ようやく機が熟してきたと感じているようです」
いち早くオファーを出したのは、旧知の間柄という元気会の松田公太代表。続けて、民主は来年改選を迎える蓮舫代表代行や細野豪志政調会長らが熱烈ラブコールを送っている。一方、自民党は党幹部や現閣僚らが三顧の礼をもって勧誘。維新の党や社民党も諦めていない。
各党がこぞって陣営に引き入れたいのには、事情がある。国民の関心がすっかり冷めきった国政選挙で、しかも目玉候補がいないからだ。とりわけ、野党は深刻で、このままいけば参院選も惨敗。自民、公明の与党が安定多数を得ることは間違いないと見られているからである。
といっても、多くの有権者の民主党アレルギーは依然として強く、維新もバラバラになった今、活路を見出せていない。一方、自民党は消費増税の軽減税率を、外食と酒類を除く食品全般に広げたことでさらに攻勢を仕掛けてくることは間違いない。
そんな中での乙武氏の出馬騒動である。自民党からすれば、乙武氏を取り込めれば、更にウイングを広げて選挙での圧勝が見えてくる。
しかし、乙武氏が掲げる理想を考えると「多様性を認める社会」で、自民党とは大きな違いがあるように感じる。健常者と障害者、男性と女性、さらにはLGBTなどを認める社会の構築と考えたとき、今の自民党では収まり切れないものがある。
一方で、考え方では近いとみられる民主だが、労働組合の支援がベースにある点を考えると窮屈で仕方ない。自由な発想をがんじがらめにされる恐れを感じなくもない。とはいえ、無所属だと何もできない。当初は無所属で出馬し当選した山本太郎参院議員がいい例だろう。だとしたら、自らが掲げる理想を追求できる政党からの出馬しかないのだ。
青臭い理想の追求と言われるかもしれないが、教育制度であったり、バリアフリー化であったり、多様性であったり、社会保障改革などは、それこそ自らを代表として受け入れ、戦う集団から出馬し、ムーブメントを作り出していくほかないのかもしれない。“第2の橋下”と呼ばれるほどのポテンシャルを持っている乙武氏から当分目が離せない。
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