[嶌信彦]【米と真逆の金融対策で市場は乱高下】― ~特集「2016年を占う!」日本経済~
Japan In-depth / 2015年12月26日 18時0分
日本や新興国の市場金利や為替相場は乱高下時代に突入するのではないか。
2015年12月になって、アメリカは遂にゼロ金利政策を解除し、金融危機後7年間にわたり続けてきた実質的なゼロ金利を変更した。金融政策を決める中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が短期金利の指標となるフェデラルファンド金利の誘導目標を12月17日から「年0~0.25%」に引き上げることを決定したからだ。この政策金利はアメリカの銀行利息、クレジットカードや自動車ローン、企業の融資などアメリカにおけるあらゆる金利に直接、間接の影響を与えることになる。いわば今回のゼロ金利解除政策は、アメリカの金融政策の大転換を意味するものとなった。
イエレン議長は①雇用環境が今年に入って相当に改善した、②年2%の物価上昇目標に中期的に近づく自信が持てた――と言い、雇用と物価の上昇率の二つの条件が満たされたとしている。なお、気になるのは原油安だが、これは“一時的要因”だと指摘した。また「まだ物価目標の2%に達していないのに利上げすること」については「利上げを遅らせすぎると景気の過熱を下げるために急激な利上げを再び強いられ、かえってまた不況に陥るリスクを高めることになる」と弁明した。
―雇用と物価の安定が重要―
FRBは2008年のリーマンショック後にゼロ金利政策と量的緩和(米国債などの資産をFRBが買上げて市場に大量の資金を流す)の2つの政策を進めてきた。3度にわたる量的緩和は14年10月に終え、15年9月から利上げに踏み切るとみられた。しかし中国の景気減速、石油価格の低落、世界の株安が広まって15年暮れまで利上げを見送ってきたが、いまや海外リスクが減り、米国内の堅調な景気の持続から自信を得て政策転換に踏み切ったものとみられる。これまではアメリカの緩和策によって巨額のドルが世界に流れ新興国などの成長を支えてきた。
―日本はまだ出口政策とれず―
今後の焦点はアメリカの金融政策の転換でまだデフレ脱却できていない日本と欧州にどんな影響を与えるか。中国や新興国の経済が更に減速しないか。世界のおカネの動きが、アメリカから外へ流れていたドルが、アメリカへ還流し始め、新興国などにどの程度影響を与えるか、アメリカが利上げに転じたものの日本や新興国は依然ゼロ―低金利、量的緩和策を取り続ければ、そのことが為替や市場金利に変動をおこさないか―などの点で、世界のおカネの流れが乱気流を起こし、相場や実態経済の乱高下につながらないか、などの点が懸念されることだろう。
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