[岩田太郎]【「信」の欠如がテロとポピュリズムを加速】~特集「2016年を占う!」国際政治~
Japan In-depth / 2015年12月29日 23時0分
2016年には、地政学や国内治安の面でも政治・経済への不信に連動した不安定化が進む。世界安定の要であった米国の機能不全は同国の疲弊・弱体化をもたらし、世界中に時代の移り変わりの動きを加速させる。米中・米露の対立激化と政治のブロック化が見られるなか、米欧の軍事的攻撃により本拠地のイラクとシリアで弱体化した過激派組織ISが、米国や欧州で「逆襲」を強化させる。逃げ道がない高速道路での無差別テロなどが起こり、テロを効果的に防止できない「西洋的な寛容政策」への不信が高まる。
他方、米国では黒人を人とも思わない警察や司法の無法がさらに暴走し、人を守るのではなく罰して奪う刑事司法への信頼は、地に落ちる。日本では報じられない、毎週のように起こる警察の丸腰黒人射殺に我慢できなくなった黒人が暴動を起こす。全米で銃乱射事件もさらに増加し、コントロールできなくなるため、人々は「政府は頼りにならない」との思いを強くする。その結果、「正義は自らの手で」という思想が蔓延し、銃規制は進まないだろう。欧州でも、非効率なテロ抑制で、「寛容政策は効果がない」とするポピュリストが躍進しよう。
このように、「信」の欠如が2016年の世界を形づくるだろう。エリートや既存制度への不信で益に浴すのは、テロリストやポピュリストだ。信頼の回復に必要な、手間ひまとカネがかかる「できるだけ多くの人が勝つ仕組みづくり」「人と人の信頼と関係性の至上命題化」という、地道で儲からない作業は見向きもされず、手っ取り早い解決を謳う勢力が支持を得る。「信」が失われる2016年の世界は、既存体制の清算と、紛争の道により深く踏み入れることになるだろう。
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
結局「ポピュリズム」とは何なのか...世界中が「極端な政党」に熱狂する理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 17時20分
-
玉木氏の不倫騒動が「国民民主の躍進」に繋がる訳 「不倫しない無能より不倫する有能」ムードの背景
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 8時30分
-
玉木氏「不倫報道」も無傷?国民民主が大躍進の訳 政党優先より政策優先、卓越したバランス感覚だ
東洋経済オンライン / 2024年11月11日 18時40分
-
焦点:歴史的選挙戦戦ったハリス氏、なぜ敗北したのか
ロイター / 2024年11月7日 19時9分
-
衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとって望ましい理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月29日 17時0分
ランキング
-
1“子どもを持たない選択”「チャイルドフリー」宣伝禁止 プーチン大統領が法律署名
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 21時22分
-
2ガザ全域をイスラエル軍が攻撃、48時間で少なくとも120人死亡…レバノンでは空爆で20人死亡
読売新聞 / 2024年11月24日 18時47分
-
3韓国政府、佐渡で25日に独自追悼行事開催
共同通信 / 2024年11月24日 16時4分
-
4ロケット弾200発超を発射 ヒズボラがイスラエルに応酬
共同通信 / 2024年11月25日 8時29分
-
5英新兵器、日本に購入打診 「反撃能力」向上を視野
共同通信 / 2024年11月24日 16時17分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください