【“凄ワザ”だけでは食えない時代到来】〜特集「2016年を占う!」地方経済〜
Japan In-depth / 2015年12月31日 7時0分
共通するキーワードは「脱・下請け」と言えよう。系列に甘んじていたら、もう仕事は来ないという危機感。それまで培ってきた技術や生産体制、創意工夫が他の分野にも通用するという自信。それらが表裏一体となって、変革や創造のエネルギーになる。
航空機部品から国際的な大型物理実験装置づくりまでを手掛ける金型メーカーの社長は「リーマン・ショックで自動車の仕事が激減したとき、とにかく新しい仕事を引き受け、アイデアを振り絞った。すると、自分たちにしかない品質管理の能力が世界に求められることが分かった」。一方で、「そうできなかった会社は、どんどん苦境に陥っている」と指摘する。
名古屋学院大学現代社会学部の江口忍教授によると、愛知県内での乗用車の生産台数は1990年に367万台だったが、2013年には169万台と半分以下になっている。しかし、愛知県以外での生産台数は636万台から645万台へと、逆に増加。トヨタが海外はもちろん、日本でも東北や九州などに生産拠点を分散している影響が如実だ。江口教授は「トヨタの好調で愛知・名古屋も潤っているように見られるが、決してそうではない。燃料電池車や自動運転車など、次世代車関連の産業も未集積で、今後はトヨタの業績と地域経済の好不調がますますリンクしなくなるだろう」と分析する。
職人技能が「凄ワザ」と単純にもてはやされるのも、長続きはしないだろう。これまでの自分たちの殻を破り、新しいステップを踏み出せなければ、淘汰される。まさに羽生選手が挑戦するような未知の領域に、日本の中小企業も勝負に入り、鍛えられようとしているのだ。
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