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[渡辺敦子]【「地政学的」に見る:地元(ローカル)の意味 その2】~境界を持たず広がる「地元」がもたらすもの~

Japan In-depth / 2016年1月3日 23時0分

だが一方で「私の場所」は尊いものである。2013年にNHK朝ドラ復活のきっかけとなった「あまちゃん」を思い出してほしい。なぜ人は地元に帰りたいのだろう。そこには思い出があり、大切な人たちが住んでいるからだ。福島だろうが三陸だろうが地元は地元であり、私の場所である。それ以上でもそれ以下でもない。アキはアキであるために、地元に帰ったのだ。地理は人を作り、人が故郷を作る。世界を股にかけ活躍する人も、地に足をつける人間である限りある土地に住み、そこから政治が始まる。

イタリアの思想家アドリアナ・カバレーロは、それをabsolute locality と呼ぶ。そこにはいかなる「所属」も存在しない。あるのは、この場所にいるのは私であるという事実のみであり、その空間が何かは問われない。「地元」は私と周囲の人々との偶然な、しかし無限のつながりのなかで、境界を持たずに果てしなく広がってゆく。こう捉えれば地理と政治の関係は、多様性を認めた肯定的なものとなり得るのではないだろうか。

(この記事は【「地政学的」に見る:地元(ローカル)の意味 その1】~地理と政治の関係とその将来~ の続きです。全2回)

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