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[渋谷真紀子]【女性のパワー、ブロードウェイでも注目】~特集「2016年を占う!」エンタメ~

Japan In-depth / 2016年1月6日 11時0分

この作品を通じて、初の女性チームという話題性をいかして、まだ埋もれている大多数の女性の現実がエンターテイメントという形で見直されればと思います。

一見、男女平等・女性の社会進出が進んでいそうなアメリカにあって、ニューヨーク等の大都市への偏りが大きいといいます。先月、国連の女性3名がアメリカの男女平等の水準が低すぎるとの調査結果を公表したことがHUFFINGTONPOST POLITICSで記事になりました。この調査はアラバマ州、テキサス州、オレゴン州等で行われたものです。

そもそも雇用機会が少ない上に、アメリカでは育休手当てがない為に、第三者に子供を預けられる経済力がないと仕事復帰が出来ないというジレンマがあります。地域によっては、教育格差(家庭の経済的理由も大きいようですが)や賃金格差もあり、結婚・出産・育児の掛け算が加わった際に、自由な選択や自己実現という考え方がそもそも現実的でないということです。 

このミュージカル”Waitress”の主人公は小さな町でパイを作るウェイトレス。アメリカの母の味を象徴するアメリカンパイを作り続けるウェイトレスは、昔ながらの男性が理想とする女性像です。高校時代から付き合って結婚した夫は、定職にもつかず家庭内暴力が酷くなる一方。いつか彼から逃げ出したいと思っている矢先に妊娠が発覚し、経済的にも逃げ出せない状況に陥ります。

そんな中、小さい頃から母に教わってきたパイ作りが功を奏し、パイ作りの大会で優勝。その賞金で、産まれてきた娘と2人、人生をやり直す決意をする物語です。昨年夏にこの作品の教育チームで働いた際には、テーマにイマドキ感が弱い気もしました。しかし実際は、ウェイトレスという職業は多くのアメリカ人女性が経験をしたことがある職業で、小さな町でウェイトレスをしながら、いつか他のこともしてみたいと思いつつ、何となく結婚して子供が産まれたら子育てをするのはとても共感出来る生き方だとわかりました。

また、家庭内暴力の問題も、反響が大きく根深い社会問題となっていることを実感しました。だからこそ、女性の言い難い本音をカッコよく歌い上げる人気歌手のサラ・バレリスが、初めてミュージカルに挑戦し、広く浸透することの重要性を感じました。POP界の人気歌手ならではの耳に残る楽曲がとても力強いミュージカルです。

新ミュージカル“Waitress”がありがちな「女性応援ミュージカル」と片付けられず、実際には活躍したくても出来ない環境でもがく人達が大勢いることに光を当て、社会変化を後押しするきっかけになってくれることに期待したいです。

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