核爆弾にしがみつく金正恩~「予測不能」ぶり、従来の分析手法通じず~
Japan In-depth / 2016年1月7日 23時28分
北朝鮮の朝鮮中央テレビは、日本時間の1月6日午後0時半から「特別重大報道」として臨時ニュースを放送し、日本時間の午前10時半に、初めて水爆実験を行い「完全に成功した」と報道した。
この時の様子を北朝鮮の平安南道消息筋は「工場で一生懸命に作業をしていたら‘特別重大放送’があるから早く宣伝室に集まれという突然の指示があって驚いた。一部では「以前(金日成、金正日の時)のように 金正恩 死亡報道ではないか?」という人もいた」とし、
それが「水爆実験成功」のニュースだったので「なぁんだ」という雰囲気に変わり、いつもあの声(アナウンサーのリ・チュニの声)で緊張させられるとぼやいていたという(韓国デイリーNK、2016・1・7)
これまで「特別重大放送」といわれたのは金日成、金正日の死亡時だけだったが、今回金正恩第1書記は水爆実験成功ニュースを「特別重大放送」として報道させた。よほど嬉しかったのであろう。これまでの核実験報道は「重大放送」とだけ伝えていた。今回の北朝鮮の核実験行動にはこれまでにないいくつかの特徴が見られた。
まず第1にフェイントをかけたということだ。
新年辞では匂いもかがせないで5日後に核実験を行った。過去にもミサイル発射をあきらめたと見せかけて発射した例があるが、どうも金正恩はスイス留学時代のゲーム好き感覚から抜け出せていないようだ。
第2に徹底的に中国を無視したことである。
中国は昨年10月の朝鮮労働党70周年記念行事に中国共産党常務委員の劉雲山を送り、習近平の親書まで持たせて核実験をしないようにと求めていた。しかし金正恩は今回それを一切無視し、これまで行ってきた事前通告も行わなかった。これでは中国との関係改善は当分無理だろう
第3は唐突で一方的な実験だったことだ。
これまでも金正日時代にも、北朝鮮は一方的な行動をたびたび取ってきた。しかしその場合でも必ず国連や米国に責任を転嫁する形で自己の正当性を主張した。金正恩時代に入っての2013年の核実験も、国連がミサイル発射に制裁を加えたことを口実にしていた。今回のように何の予告もなく抜き打ち的に核実験を行ったことはなかった。
北朝鮮のこうしたこれまでにない行動は、核は絶対に手放さないということを行動で示したものであるといえる。インドのように核を保有したまま国際社会との関係を持とうとするものだ。核弾道を装着した(移動発射や潜水艦発射が可能な)長距離弾道ミサイルを米国本土に到達させられるようになれば、まだるっこい外交をしなくても、孤立を突破し資金を獲得できると踏んでいるのであろう。今回の核実験を通じて金正恩はその「予測不能」ぶりを内外に示した。
これは、これまでの既存の北朝鮮分析方法では北朝鮮の行動を分析できなくなったことを示している。すなわち傍で諌める人がいなくなり、北朝鮮の政策が金正恩個人の気分と性格によって左右されるようになったということだ。金正日時代と同じ感覚で北朝鮮分析を続ければ大きな間違いを犯す可能性が出てきた。
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