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【二大政党制の崩壊と政局不安】~特集「2016年を占う!」スペイン政治~

Japan In-depth / 2016年1月9日 18時0分

【二大政党制の崩壊と政局不安】~特集「2016年を占う!」スペイン政治~

2015年12月、スペイン議会総選挙で新党2党が大躍進を遂げ、1977年の民主化以来保たれてきた二大政党制が終わりを迎えた。各党に票が分散したことから、いずれの政党も過半数の議席を得ることができず、連立政権の樹立も困難な状況となっている。

新党躍進の背景

従来の二大政党である国民党(PP)と社会労働党(PSOE)に次いで、今回第三党となったポデモス(Podemos)は、メンバーがノージャケットのラフな格好で活動を行うユニークな政党である。スペインでは2010年代に入り、リーマンショックやギリシャ危機などの煽りを受け景気が悪化、失業率は20%を超える事態となった。

その状況下で、失業などに苦しむ若者らによる反政府デモがスペイン各地に広がったことをきっかけに、2014年1月、ポデモスが結党された。また第四党の市民党(シウダダノス、C’s)も、市民運動を発端に2006年に結党された新しい政党である。

今般の選挙において新党2党が多くの支持を得たのは、長引く不況を背景に、二大政党に不満をもつ有権者の票が流れたからだと言われている。従来政治に嫌気が指した左派寄りの有権者は社会労働党からポデモスに、右派寄りの有権者は国民党から市民党(シウダダノス、C’s)に支持を変えた。

一方で、この新党2党の躍進を良く思わない有権者も少なくない。「ポデモスや市民党の政策には実現性がない。彼らは人気取りのために有権者が喜ぶ主張をするだけで、具体的な方法を示さない。」と有権者の一人は話す。

今後の政局

スペインで首相に選出されるためには、下院の決議において多数の支持を獲得する必要がある。今回の選挙で獲得した議席の割合はそれぞれ、国民党28.72%、社会労働党22.01%、ポデモス20.66%(関連する政党の合計)、市民党(シウダダノス、C’s )13.93%である。右派寄りとされる国民党と市民党、または左派寄りとされる社会労働党とポデモスを合わせても過半数に届かない状況となっている。

このまま首相が決まらなければ再選挙となる可能性もあるが、国民党は現在、社会労働党の協力を得て政権を樹立する可能性を模索している。国民党を率いるラホイ党首は、社会労働党や市民党との連立について、「レッドライン(妥協できない一線)は設けない」と柔軟な姿勢で交渉に臨む姿勢を見せている。

しかし、社会労働党は選挙直後から一貫して国民党政権を支援しないことを明言しており、「連立ではなく不反対が現実的なシナリオ」と言われている。首相決議に関して社会労働党と市民党が中立的な立場を取れば、国民党のラホイ党首は賛成多数で首相に選出される見込みとなる。

一方、左派寄りとされる社会労働党がポデモスや他の小政党との連立を組む可能性も浮上している。社会労働党のサンチェス党首は7日、「進歩の大連立」の構想を抱いているとマスコミに語った。ただし連立の相手とされる小政党の中には、カタルーニャやバスク地方の独立を理念とする政党も含まれており、これに反対する社会労働党との連立交渉は一筋縄にはいかないはずだ。

スペインの経済は、失業率が依然20%を上回るなど、現在も危機を脱したとは言い難い。国民党が全議席の半数を下回る政権を発足させた場合、機動的な経済政策の実行に障害を残すこととなる。また左派の連立政権が立ち上がった場合にも、軌道に乗り始めた経済・財政政策からの転換が求められることになる。いずれにしてもスペインの経済回復は、まだしばらく時間がかかりそうだ。

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