[山田厚俊]【自衛隊を“世界のレスキュー隊”に】~特集「2016年を占う!」安全保障~
Japan In-depth / 2016年1月10日 18時0分
年末年始、複数の永田町関係者と話をした。今年は参院選イヤー。焦点は衆参ダブル選があるのか、野党は結集して“反安倍政権”の受け皿となるのか、に尽きる。
しかし、それ以上に「我が意を得たり」と感じたのは、安保法制をめぐるこの国の安全保障の将来像だった。与党が数の優位性を背景にゴリ押しをしたことは当然ながら疑問視しているが、それ以上に野党の国会質問も情けなかった。
自衛隊の位置づけをどうするのか、地球規模の安全保障をどう見据えてこの国の立ち位置を構築していくのか、そういったものは皆無で重箱の隅をつつくような堂々巡りが国会質問を陳腐なものに見せていたように感じて他ならない。
自衛隊は、1995年の阪神・淡路大震災以降、人命救助の最後の砦としてかけがえのない機関だとの認識が国民の中に浸透している。とりわけ、東日本大震災でその力を改めて感じたことに異論を挟む余地はないだろう。
かつて、わが師の故・黒田清氏が、「もう自衛隊やのうて災害救助隊に名称変更したらええやんか」と言っていたことを思い出した。そこで、この安保法制論議だ。大規模災害における人命救助のノウハウなど、今の日本の自衛隊は世界でもトップレベルだと聞く。ならば、自衛隊を「戦闘ができる部隊」ではなく、「世界のレスキュー隊」と位置付けることはできないのか。米国が今なお「世界の警察」を自負するならば、日本はそんな立場を明らかにして、災害地などでの人命救助にあたる役目を担うという方針を打ち立てるのも一つの指針だと思うのだ。
もちろん、自衛の武器の所持や、戦闘地での役目など議論すべきところは多い。しかし、邦人を守ることを第一義としながら、プラス世界で認められる役割を見出さなければ、この議論は結局なし崩し的に自衛隊を単なる「軍隊」にしてしまうだけで終わってしまう。
野党だけではない。与党の中でも、そして専門家と呼ばれる人たちの中でも、新たな議論で国民が納得し、世界にアピールできる一つ上のステージの議論を展開してほしいと願うばかりである。
トップ画像:出典 防衛省・自衛隊 HP / Picasa web Album
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