[古森義久]【アジア軽視のオバマ大統領】~北朝鮮核武装の脅威に言及せず~
Japan In-depth / 2016年1月17日 11時0分
アメリカのバラク・オバマ大統領が1月12日、連邦議会の上下両院合同会議で一般教書演説を行った。大統領としての8年の任期の最後の一般教書演説だった。この演説はアメリカという国家の現状を内政、外交の両面にわたり、大統領が議会、つまり国民に対して伝え、施政の方針を述べるという報告である。
だから一般教書演説はその大統領と政権の政治の姿勢や目標を知るための主要な指針となる。そうした観点から今回のオバマ大統領の最後の一般教書演説を読むと、アジアへの関心が意外と少ないことが明白となる。外交面では中東情勢やウクライナ情勢を熱心に語りながらも、アジアについてはほとんど言及がなかったのだ。
こうしたオバマ大統領のアジア軽視という傾向を共和党側の若手有力上院議員が北朝鮮への言及の欠落を指摘する形で批判していた。コロラド州選出のコーリー・ガードナー上院議員の批判である。同議員はまだ41歳の若手だが、アジアに関しては北朝鮮の人権弾圧や核武装への動きを頻繁に取り上げてきた政策通だという評判が高い。そのガードナー議員が次のような声明を出したのだ。
「オバマ大統領は一般教書演説でアメリカの外交政策がIS(イスラム国)やアルカーイダの脅威に焦点を合わせるだけでなく、もっと幅広い脅威への対処が必要だと強調した。にもかかわらず大統領が演説全体のなかでつい最近、波紋を広げた北朝鮮の核武装の脅威に一切、なにも触れなかったことに私はショックを受けた」
「アメリカは北朝鮮の核兵器開発に対し『絶対に許容しない』などという言明をし続けてきたのだから、いまこそその言葉を行動に移す時期だ。今回、その問題になんの言及もしなかったオバマ大統領が今後全世界に範を示し、本当に北朝鮮の核を許さないことを実行するよう私はアメリカ議会を通じて強く求めていく」
以上の趣旨を表明したガードナー議員はまずアメリカ上院がたまたま現在、審議中の北朝鮮に対する経済制裁強化の法案への断固たる支持を述べたのだった。
若手議員からのこうした批判はオバマ大統領がアジアとか北朝鮮問題には実はそれほど真剣な関心は抱いておらず、核兵器拡散に対しても強固な態度をとりたがらない、という傾向を浮きぼりにするともいえそうだ。
トップ画像:everystockphoto / photo by My Hobo Soul
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