[瀬尾温知]【あえて3位決定戦を望む理由】~日本、イラン下し準決勝へ サッカー五輪最終予選~
Japan In-depth / 2016年1月23日 18時0分
やるかやられるかの一発勝負で、日本は延長に3点を奪ってイランを破り、オリンピック出場まであと1勝とした。
サッカー男子のU-23日本代表が、リオデジャネイロ・オリンピックの出場権をかけたアジア最終予選の準々決勝で、イランに3対0で勝って4強入り。次戦に勝てば、6大会連続のオリンピック出場が決まる。準決勝に敗れたとしても、3位決定戦で勝てば出場権を得るところまできた。2戦で1勝さえすれば、リオへの切符は手に入る。
しかし、対イラン戦、前後半の90分は互角の戦いで、シュートがバーに当たるなどの決定機があったイランの方がチャンスは多かった。まだ日本には、アジアを圧倒するだけの力がないということがよく分かる試合だった。ただ、接戦をものにする勝負強さはあるし、世界へアピールしようとの向上心も見受けられるので、個人もチームも強化されるために、1試合でも多く厳しい戦いを経験してもらいたいと考えている。
その最たる厳しい戦いを経験できるのは、3位決定戦である。この試合こそが、オリンピック出場か否かの「やるかやられるか」の死闘になる。もちろん準決勝も緊迫した試合になるだろうが、出場権を獲得してからの決勝は、緊張から解き放たれた雰囲気になる可能性がある。1試合でも多く厳しい戦いを経験するには、準決勝で負けなければならない。負けられない試合とはよく聞くフレーズだが、負けなければならない、というのは異例のフレーズになる。
日本と反対側のブロックは、カタールが準決勝進出をすでに決めており、そのカタール、韓国、ヨルダンのいずれかと日本は3位決定戦に回ったときに対戦する。「やるかやられるか」での日韓戦なんて、至極の経験値になるではないか。そこで日本の準決勝の相手だが、イラクとUAEの勝者と当たることになる。イラクを目にしたら、思い出さずにはいられないことがある。それもドーハで、だ。
ローマの歴史家、クルティウス・ルフスが1世紀に残した“歴史は繰り返す”という言葉がある。過去に起こった出来事は、時代を超えて類似の出来事が繰り返し起きると論じたものだ。日本が悲願のワールドカップ初出場をつかみかけていたドーハでのイラク戦で、ショートコーナーから失点したドーハの悲劇は、23年後のドーハで類似した形で繰り返されることになるのだろうか。
もしイラクがUAEに勝って、日本との準決勝が決まったら、ドーハの悲劇はメディアに持ち出され、話題に上ることだろう。でも今回は、イラクに手痛い目に遭わされたとしても、それは悲劇ではない。なぜなら3位決定戦という至極の経験が残されているからだ。
準決勝に勝って一気に決めようとの流れの中、3位決定戦を待ち望むなんて、今風に言うならば“マゾの極み”といったところか。世論はどうなのだろう。日本と韓国の対戦を観るとしたら、決勝か、それとも3決か、どちらを望んでいるのか気になるところである。
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