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衝撃!「水素社会」は来ない その1

Japan In-depth / 2016年2月11日 21時53分

気体水素は1立方メートルに詰めても100gしか運べない。タンクローリの容積はだいたい30立方メートルなので無圧縮では3キロしかつめない。仮に20気圧に圧縮しても60kgにしかならない。この点で立法メートルあたり0.9~0.6t、タンクローリで25~20t積めるガソリン等の液体燃料には大きく劣る。

また液化輸送にも限界がありプロパンや天然ガスに劣る。

水素の液化輸送は面倒である。まずマイナス250度まで下げなければ液化しない。これは絶対零度まであと20度の超低温だ。そして、液化しても1立方メートルで70kgにしかならない。その上、蒸発しやすい。1立法メートルはたった7000kcalの熱量で完全気化してしまう。これはコップ一杯、150ccの水を蒸発させるだけの熱量でしかない。

対して、プロパンは加圧すれば常温でも液化し、天然ガスはマイナス160度(メタン)で液化する。その際にはプロパンで1立米500kg、天然ガスで260kg(純メタン)以上となる。同じ容積で4-7倍の量が運べる。蒸発損にしてもメタンは加圧すれば蒸発しないし、天然ガスも水素よりも蒸発しにくい上、予冷により沸点までの時間が稼げる。

■ トラック輸送は絶望的

この輸送の非効率は、周南市長へのインタビューでも明らかである。「エネルギーの街、公用車はFCV「MIRAI」…周南市 木村健一郎市長」『HANJO HANJO』によれば

「コンビナートから生産された水素は液化水素化され、トレーラーで水素ステーションへと輸送される。運ばれた液化水素は最先端設備により再び気化され1キロあたり1100円で販売されており、市内をはじめ近県のユーザーにも利用されている」

とある。つまりは周南市で液化した水素は近郊にしか運べない、それ以上の距離では蒸発損が多すぎて話にならないということだ。

■ タンカーも同じ

輸送効率の悪さは水素タンカーも変わらない。最新の断熱材を利用し、表面積を最低限にした天然ガスタンカーでも1日に0.6%のガス蒸発損が生まれる。同じタンカーで液体水素を運んだ場合、その損は5倍以上、1日3%以上となる。豪州の褐炭ガス由来の液体水素輸入の話があるが、日本までの輸送日数14日で半分は蒸発してしまう。

川崎重工が高断熱の専用船を作る話もある。だが、高価格が確実な割に2500立法メートル、つまり175トンしか積めない。これなら飛行船のような気球に詰めて、通常の石炭や鉄鉱石のばら積み船で曳航したほうがマシだ。

■ パイプラインも難しい

水素輸送唯一の解決策はパイプラインである。要は都市ガス同様に配管で運ぶ方法だ。

だが、供給網としての実現は難しい。日本の都市近郊では地上設置配管は難しいため、地下配管となる。当然、建設費や維持費が高く付く。

実際に日本ではコストの問題からパイプラインは少ない。列島を縦断するような大規模パイプラインは新潟ガス田-関東間の1系統しかない。また、都市ガス供給もコスト的問題から都市部しかつくれていない。

それ以上に利用先が限定される水素パイプラインはコスト的に現実的ではない。例えば「埼玉県で20軒の水素ステーションのため東京湾岸から40キロの基幹線を引き、そこからさらに水素ステーション1軒ごとに5kmの分配線は引けるか」を考えればわかるだろう。

(衝撃!「水素社会」は来ない その2 に続く)

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