税理士も憤る軽減税率 消費税という迷宮 その5
Japan In-depth / 2016年3月2日 11時0分
「下請けイジメ」のようなことは現実にあるけれども、そういう一部の事実をもって、現行の税制全体が問題を抱えているかのように言うのは、詭弁というものだろう。それに、軽減税率の適用が始まるのは来年だが、インボイス方式が導入されるのはその4年後。「4年経てば、消費税負担を押しつけられることもなくなります」などと言われて納得できるほど、今の中小企業の経営は悠長なのか。
こうした、徴税・納税の両面にわたる事務の煩雑化と並んで、財源の問題も大きい。軽減税率を導入したことにより、試算方法によって多少の差はあるものの、1兆円規模の税収が失われることになる。この財源をどうやって手当てするのか、解決案は先送りとなったままだ。
何度でも言わせてもらおう。そもそも消費税とは、少子高齢化社会の到来を見据えて、福祉の崩壊を食い止めるべく、必要な財源を確保するためのものだったはずだ。ならば、この20余年の間に、わが国の福祉は多少なりとも向上するか、少なくとも後退することがあってはならなかったはずではないか。現実はどうか、などと今さら書き立てては原稿料泥棒になりかねないから控えるが、消費増税と抱き合わせのような形で、政府がなにを考えついたかと言えば、
「所得の低い高齢者に3万円ずつ支給する」
というバラマキ政策。ああ、なにをか言わんや。
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