トヨタ・ダイハツ・スズキ新三角関係 その4
Japan In-depth / 2016年3月7日 12時0分
一方で、トヨタがスズキの10%、ないしは何%かを持ったとして、スズキにはそれ相応のキャッシュが入ってくる、その見返りにトヨタはスズキから何を得るのか。最初に報道した日経やその他メディアが必ず取り上げるのが、トヨタがスズキと資本提携すれば、スズキの協力を得て、トヨタがインド市場を開拓出来る、というものです。はっきり申し上げて、こんなことは有りえません。ほぼナンセンスと言っていいと思います。
インドはスズキの牙城、利益の最大の源泉です。以前、スズキの収益構造についてここで詳細に解説したことがありますが、今期は国内利益が減少していることもあり、インドはスズキの連結営業利益の、約70%$程度を占めることになるのではないでしょうか。マルチスズキのインドでのシェアは40%強、現在、デリーにあるグルがオンとマネサールの2工場に加え、グジャラートに2017年をメドに新工場を建設中、生産能力は現在の50%増の年間200万台強に達し、インドでは2位以下を大きく引き離してのダントツトップの座を維持する方向です。
その会社が、こともあろうに、トヨタに自分の市場を明け渡すような協力をする理由など、どこにもありません。トヨタがスズキの50%以上の株を引き受け、連結子会社化するなら話は別ですが、出資比率が10%やそこらの低水準であるならば、インドにおけるトヨタとスズキの提携など、殆ど現実性はありません。唯一、スズキが国内市場でマツダや日産に一部軽自動車のOEM供給をしていますが、これ同様に、一部車種を若干台数トヨタにOEM供給することは可能かもしれませんが、これによってトヨタがインドへのアクセスを大きく改善できるとは、到底思えませんし、スズキがそのようなことをするとも思えません。
ではトヨタはスズキへ出資する見返りとして何を求めるのか。ダイハツとスズキの間での開発協力、部品共有化?これも無理です。前述のように、ダイハツとスズキの双方がトヨタの子会社なら可能ですが、出資比率10%の会社と部品の共有化など非現実的です。また、ダイハツとスズキの部品共通化など提携強化の動きは、独禁法違反に抵触する可能性があります。勿論販売協力など問題外です。ダイハツとスズキの提携などの目もありません。
環境技術の供与など、プラグインハイブリッド車や燃料電池車の分野で、トヨタとスズキが開発協力をする余地はあります。但し、スズキは最近自前の環境技術を蓄えており、必ずしもトヨタの技術が必要とも思えません。勿論、環境技術の分野では膨大な開発費が必要で、数社で分担することで、財務負担の低減にはつながります。トヨタにとっても、スズキがトヨタのデファクトスタンダードに入れば、それだけ世界でのマーケティングがし易くなり、コストも低減できるメリットがあるかもしれません。ただ、これがトヨタが投資するかもしれない2,000億円前後の投資に見合うかというと、甚だ疑問と言わざるを得ません。
結局、トヨタがスズキに10%(=1,500億円)前後出資したとして、トヨタやダイハツに相応のプラスがあるかと言えば、なかなか難しいと言わざるをえません。それでもトヨタはスズキへ出資することで、スズキをAll Japanの一員に留めて置ける、という側面をどう考えるか、ということでしょうか。
(4日連続12時配信。トヨタ・ダイハツ・スズキ新三角関係 その1,トヨタ・ダイハツ・スズキ新三角関係 その2 ,トヨタ・ダイハツ・スズキ新三角関係 その3もお読み下さい。全4回)
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