「消費税なき日本」は可能なのか 消費税という迷宮 その6
Japan In-depth / 2016年3月7日 18時0分
という過去の税制が本当に健全だったのか、しかもそれで消費税を撤廃できるほどの税収が見込めるか、と問われると、自信を持って「然り」と答えられる人が、今の日本にどれだけいるのだろうか。
もうひとつの、消費税の目的税化については、M税理士が愛読しているという、『日本税制の総点検』(北野弘久、谷山治雄編著・勁草書房)
という本の中に、なかなか有力な反論となり得る一文がある。
「ヨーロッパ諸国において大型間接税・付加価値税を福祉目的税化している国は一カ国もありません。もちろん福祉目的化などという誤魔化しの手法を使っている国も一カ国もありません」(P180)
これは、この通りである。しかし、税収の20年分を超す負債を抱えている国など、ヨーロッパ諸国には一カ国もないわけだから、同列に論じられないことは明かだろう。
これは本シリーズを通じて幾度も指摘したことだが、日本の税制のなにが一番問題なのかと言うと、一方では高福祉・高負担の原理に立つヨーロッパ型社会モデルの「高負担」の部分のみ真似たような消費税制を導入し、他方では大企業を徹底的に優遇する米国型新自由主義の経済政策をとり続けていることなのである。
もうひとつ、前掲書の中にある文章だが、
「福祉目的税化した場合、社会保障費の増大はただちに消費税の増税につながります」
「問題なのは、消費税を福祉目的税化した場合、所得税や法人税など他の税収が浮きますから、その浮いた分を公共事業費、軍事費、国債費などに堂々と使うことができるわけです」(いずれもP181)
私の議論はもっと単純で、たとえば英国のように、医療費と公立学校の学費は原則無料、60歳以上は公共交通料金も無料という社会が実現するのであれば、それこそ消費税率が英国と同じ20%になってもよい、という考えに立っている。
前掲書が本当に問題にしているのは、税金の入り口と出口、すなわち徴税目的と使途に、誤魔化しがあってはならない、ということである。その通り。だからこそ、堂々と消費税を福祉目的税化するのがよい。
こうした反対の意見を踏まえて、私としても今後さらに研究を深め、いよいよ消費税が引き上げられる、というタイミングで、新たなシリーズをお届けしたいと考えている。
-
-
- 1
- 2
-
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本ブロックチェーン協会、「暗号資産に関する税制改正要望(2025年度)」を政府に提出
PR TIMES / 2024年7月19日 18時45分
-
「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 7時45分
-
近年急増の「不動産M&A」…「不動産売買」との決定的な違い【不動産鑑定士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月28日 7時45分
-
超富裕層への国際課税議論、10億ドル超資産に年2%が起点=経済学者
ロイター / 2024年6月26日 13時56分
-
「あのときやっておけばよかった」と後悔する前に…。デメリットを考慮しても、NISAが投資初心者におすすめな理由【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月25日 11時30分
ランキング
-
1投資信託「以外」のほったらかし投資の選択肢とは 年利10%ならおよそ「7年で資産が倍」になる
東洋経済オンライン / 2024年7月21日 9時0分
-
2物言う投資家エリオット、スタバ株を大量取得=関係筋
ロイター / 2024年7月20日 5時59分
-
3次はコメで家計大打撃!? 昨年の猛暑の影響で不足が懸念、約11年ぶりの高値水準に 銘柄によっては品薄や欠品も
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月20日 10時0分
-
4サーティワン、大幅増益 「よくばりフェス」や出店増が奏功
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月19日 18時48分
-
5今回のシステム障害、補償はどうなる?…「保険上の大惨事」「経済的損害は数百億ドル」
読売新聞 / 2024年7月20日 21時24分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)